- 神経細胞前駆細胞を復活させる
[出典] 
[注]
  • 神経新生ニッチ (neurogenic niche):神経新生が起こる微小環境を意味する。神経新生とは、脳内で前駆細胞から新しい神経細胞を産生する一連の現象全体を指す
  • 部分的リプログラミング (partial reprogramming):リプログラミング転写因子 (Oct4,Sox2,Klf4,およびc-Myc: OSKM) のパルス発現により実現される。
 部分的リプログラミングによって、老齢マウスのいくつかの組織の機能が改善されることが報告されたきた。また、神経新生ニッチの機能と新たな神経細胞を産生する能力が加齢によって著しく低下ことが知られている。一方で、部分的リプログラミングが老齢脳にどのような影響を与えるかは、まだほとんどわかっていなかった。スタンフォード大学の研究チームが今回、OSKMを誘導的に発現させた部分的リプログラミングを可能にした遺伝子改変マウスを対象として、シングルセル・トランスクリプトミクスを介して、部分リプログラミングが老齢マウスの脳室下帯神経新生ニッチにどのような影響を与えるかを体系的に調べた。

 全身の部分リプログラミングは、主に老齢の神経新生ニッチにおいて、新しい神経細胞を生み出す細胞である神経芽細胞の割合をより若々しいレベルにまで回復させた。興味深いことに、部分リプログラミングを全身ではなく神経新生ニッチに特化させると、老齢マウスにおいても、神経芽細胞とその前駆細胞 (神経幹細胞) の割合が増加し、一連の老化の分子シグネチャーの一部が改善された。

 老齢の神経幹細胞培養において、部分的リプログラミングが施された細胞は自律的に分化中の神経芽細胞の割合を回復させ、加齢に関連したいくつかのトランスクリプトーム変化を鈍らせた。

 本研究において、部分的リプログラミングが、試験管内および老齢脳における新しい神経細胞の産生を改善することが示され、部分的リプログラミングによる神経発生ニッチの若返りと、高齢者の脳の衰えに対抗可能なことが示唆された。