[出典] "Minimizing the ratio of ionizable lipid in lipid nanoparticles for in vivo base editing" Chen Q [..] Yin H. Natl Sci Rev 2024-04-03. https://doi.org/10.1093/nsr/nwae135 [所属] Wuhan U, Wuhan Research Center for Infectious Diseases and Cancer.
脂質ナノ粒子 (LNP)は、siRNAとmRNAの両方のキャリアとして臨床的に承認されている。LNPの重要な成分の中で、RNAの結合と細胞内でのRET放出を担うイオン化可能な脂質 (以下、イオン化脂質) が、RNAの送達効率を決定する上で極めて重要な役割を果たしている。一方で、イオン化脂質は、カチオン性脂質よりも免疫原性が低いとされてきたが、臨床試験で副作用が報告されている。また、齧歯類での実験から、イオン化脂質が炎症性因子と一連のケモカインのレベルを上昇させることが報告されている。そこで、脂質の用量の低減や安全な代替担体が求められている。
中国の研究チームは今回、既存のイオン化脂質の一つであるSM-102と比較して水酸基の数が多い一連のイオン化可能な脂質を合成した (HTO12, HTO14, HTO16と命名)。驚くべきことに、HTO12脂質をベースとしたLNPは、SM-102脂質をベースとしたLNPと同等のmRNA導入効率と生物安全性を示した。しかしながら、前者はSM-102と比較して、LNP中のmRNAに対するイオン化可能な脂質の比率を2.5倍減少させた。
HTO12 LNPは、アデニン塩基エディター (ABE)のmRNAとPcsk9を標的とするsgRNAを効率的にカプセル化し、マウスの肝臓内での実質的な遺伝子編集と標的タンパク質の効果的な減少をもたらした。
本研究は、複数のヒドロキシル基を持つイオン化可能な脂質が、生体内デリバリーのためのイオン化可能な脂質の投与量を最小化するために、脂質対mRNAの比率を改善する可能性があることを示した。
コメント