[出典] "A Recql5 mutant facilitates complex CRISPR/Cas9-mediated-chromosomal engineering in mouse zygotes" Iwata S, Nagahara M, Ido R, Iwamoto T. Genetics 2024-04-05. https://doi.org/10.1093/genetics/iyae054 [所属] 中部大学
三本以上の染色体が関与する複雑な染色体再編成 (complex chromosamal rearrangement: CCR) は、癌患者や先天性疾患患者の臨床サンプルでしばしば観察されるが、CCRはゲノムの安定性を著しく損ない細胞死を招くことがあるため、実験的に誘導することは困難であった。中部大学の研究チームが今回、CCRの動物モデルを確立することに初めて成功した。
DNAの複製、転写、修復に関与するDNAヘリカーゼRecQファミリーの重要なメンバーであるRecql5 の変異を利用することで、CRISPR/Cas9を介したCCRが可能となり、三重融合遺伝子とメガベースサイズの逆位を含むモデルマウスが樹立された。
個々の染色体再編成の構造的特徴のいくつかは、テンプレートスイッチングとマイクロホモロジーを介した"break-induced replication"を利用しており、新たに報告された現象 "chromoanasynthesis [*]"を彷彿とさせる。
個々の染色体再編成の構造的特徴のいくつかは、テンプレートスイッチングとマイクロホモロジーを介した"break-induced replication"を利用しており、新たに報告された現象 "chromoanasynthesis [*]"を彷彿とさせる。
[*] 最近発見されたCCRの一形態であり、複製フォークの失速とテンプレートスイッチング (fork stalling and template switching: FoSTeS) およびマイクロホモロジー媒介破断誘発複製 (microhomology-mediated break-induced replication: MMBIR) を介した単一染色体の誤ったDNA複製によって引き起こされ、複雑な再配列領域を生成する [Hum Reprod, 2018]
これらのデータは、Recql5変異マウスが、根本的なメカニズムがよく分かっていないCCR(特に、chromoanasynthesis)の病態を解析するための強力なツールとなりうることを示している。
本研究で作製されたRecql5変異体は、主要な動物研究施設に寄託される予定であり、これにより将来のCCR研究に利用できるようになる。
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