[出典] "Rare genetic variation in fibronectin 1 (FN1) protects against APOEε4 in Alzheimer’s disease" Bhattarai P, Gunasekaran TI, Belloy ME [..] Mayeux R, Kizil C, Vardarajan BN. Acta Neuropathol. 2024-04-10. https://doi.org/10.1007/s00401-024-02721-1 [所属] Columbia Uを主とする研究グループ 

 アルツハイマー病 (AD)の発症リスクは、APOEε4対立遺伝子を持つ個体で有意に上昇する。一方で、APOEε4を有する高齢の認知健常者も存在することから、APOEε4の病理学的影響を打ち消す細胞メカニズムの存在が示唆される。

 研究チームは今回、認知症のないAPOEε4キャリアは、APOEε4が介在するAD病態の発症を防ぐ遺伝的変異を持っている可能性があるという仮説を立て、
National Institute on Aging Alzheimer's Disease Family Based Study (NIA-AD FBS)、Washington Heights/Inwood Columbia Aging Project (WHICAP)、Estudio Familiar de Influencia Genetica en Alzheimer (EFIGA) のコホートにおける全ゲノムシークエンシング (WGS) データを活用し、未罹患のAPOEε4保因者のみに分離する潜在的な防御変異を同定した。
  • 70歳以上のホモ接合性未罹患保因者において、510個の稀なバリアントを同定した。これらのバリアントを有する遺伝子は、パスウェイ解析により、細胞外マトリックス (ECM) 関連プロセスに有意に濃縮されたことから、ECMタンパク質の機能的修飾による保護効果が示唆した。
  • 続いて、ECM関連遺伝子オントロジーにおいて高度に発現しており、血液脳関門 (BBB)
  • で発現していることが知られている2つの遺伝子、FN1とコラーゲンタイプVIα2鎖 (COL6A2) を選択し、死後検証およびin vivoでの機能研究が進められた。
  • 7185人のAPOEε4ホモ接合体キャリアの大規模コホートにおける独立した解析によると、FN1のrs140926439バリアンとにADの予防効果があり、発症年齢が3.37歳遅れていた。
  • ADのAPOEε4キャリアでは、BBBにおいてFN1およびCOL6A2タンパク質レベルが増加していた。
  • 認知機能に障害のないホモ接合型APOEε4キャリアの脳発現は、ADのホモ接合型APOEε4キャリアと比較して、FN1沈着が有意に低く、反応性グリオーシスも少なかった。
  • これらのことから、FN1がAPOEε4が介在するAD関連病態と認知機能低下の下流ドライバーである可能性が示唆された。
  • これらの知見を、ヒトFN1のオーソログであるfn1bの機能喪失(LOF)変異を持つゼブラフィッシュモデルで検証したところ、FN1の病的な蓄積が、毒性タンパク質のクリアランスを損なう可能性があり、FN1のLOFによってそれが改善されることが示唆された。
 本研究は、FN1の血管沈着がAPOEε4の病態に関連し、FN1のLOF変異体がAPOEε4に関連したADリスクを低下させる可能性が示唆されることを示し、ひいては、ADリスクを軽減するためにECMを標的とした潜在的な治療介入への可能性を示唆した。