[出典] "Why Does the E1219V Mutation Expand T-Rich PAM Recognition in Cas9 from Streptococcus pyogenes?" Bhattacharya S, Satpati P. J Chem Inf Model. 2024-04-10. https://doi.org/10.1021/acs.jcim.3c01515 [所属] Indian Institute of Technology Guwahati

 SpCas9が認識するカノニカルなPAM配列は5′-NGG-3′であるが、PAMの制約を弱める変異をSpCas9に導入することで、SpCas9の治療やゲノム編集への応用を広げることが試みられてきた。しかし、PAM認識のエネルギー論や原子構造との関係については不明な点がまだ残っている。インドの研究チームは今回、活性化前のSpCas9:sgRNA:dsDNAの3者複合体のX線構造を鋳型として、SpCas9の変異によるPAM結合親和性の変化をコンピューターシミュレーションにより計算した。
  • SpCas9のE1219V変異は、PAM結合ポケットにおける水のアクセシビリティを微調整し、SpCas9:非カノニカルT-リッチPAMにおける新たな相互作用を促進し、その結果、PAMの制約を弱めた。
  • 2つのアルギニン残基 (SpCas9のR1333とR1335) のヌクレオチド特異的相互作用は、5′-NGG-3′PAMの厳密な認識を確実にした。
  • R1335A置換 (SpCas9R1335A) は、SpCas9とPAM配列 (カノニカルまたは非カノニカル) との間の直接的相互作用を完全に破壊し、編集活性消失をもたらす。
  • 二重変異体 (SpCas9R1335A,E1219V)は、脱溶媒和ポケットにおけるタンパク質:PAMの静電的接触を促進することにより、DNA結合親和性を高めている。
 SpCas9変異体のDNA切断活性が多様であるのは、その根底にある熱力学的性質によって説明可能である。エネルギー力学、構造、活性の間の直接的な関連性を理解することで、性能が高いSpCas9ベースのゲノム編集ツールの合理的な設計に役立つことが期待される。