[出典] 
  • 論文 "Genomic deletions explain the generation of alternative BRAF isoforms conferring resistance to MAPK inhibitors in melanoma" Aya F [..] Valcárcel J. Cell Rep 2024-04-09. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.114048 [所属] Centre for Genomic Regulation (The Barcelona Institute of Science and Technology), Hospital Clinic (Barcelona), Institut de Investigacions Biomedicas August Pi i Sunyer, Institució Catalana de Recerca i Estudis Avançats, U Pompeu Fabra;グラフィカルアブストラクト 
  • ニュース "Melanomas resist drugs by ‘breaking’ genes" Center for Genomic Regulation. EurekAlert! 2024-04-12. https://www.eurekalert.org/news-releases/1040753
 メラノーマ患者のおよそ2人に1人は、BRAF 遺伝子に変異を持っていることから、その変異がもたらす機能を阻害する標的療法が開発された。過去10年間のメラノーマの標準的な治療法の一つは、BRAF変異とMEKの両方を同時に標的とすることであった。これら2つの遺伝子はMAPKシグナル伝達経路の一部であり、腫瘍では制御不能な増殖のために経路が変更される。2種類の阻害剤を併用する療法は、初期には大きな効果が得られたものの、BRAF 遺伝子変異を有するメラノーマ患者の約50%が、腫瘍が薬剤耐性を獲得することで、1年以内に再発する。

 BRAF 変異メラノーマの再発の主な原因であるMAPK阻害剤 (MAPKi) に対する耐性は、BRAF阻害剤単剤療法を受けている患者の最大30%において、BRAF mRNA代替アイソフォーム (alternative BRAF isoforms: altBRAFs) の産生と関連している。これらのaltBRAFは、mRNA前駆体 (pre-mRNA) の選択的スプライシングによって生成される、と説明されており、メラノーマの薬剤耐性を克服するための治療戦略としてスプライシングを制御することが提案されてきた。

 こうした認識と対照的に、スペインの研究チームが今回、altBRAFがゲノム欠失によって生成されることを報告した。altBRAFが介在するメラノーマ抵抗性の異なるin vitroモデルを用いて、BRAF V600E 対立遺伝子からのみaltBRAFが産生され、対応するゲノム欠失 [*]と相関することを示した。すなわち、この欠失により腫瘍はBRAF阻害剤が標的とする領域を欠くタンパク質の代替バージョンであるaltBRAFを作り出し、MAPK経路を再活性化し、薬剤の効果を低下させることを発見した。
[*] エクソン4-8を欠失しているBRAFアイソフォーム (以下、BRAF3-9);本研究では、in vitroモデルのすべてのaltBRAFに一貫して存在するBRAF 遺伝子のエクソン15のT1799A変異を標的とするCRISPR-Cas9編集が試みられている。

 驚くべきことに、同じゲノム欠失を、化学療法を受けていないメラノーマ患者においても発見した。言い換えれば、メラノーマは、薬剤にさらされていなくても、薬剤耐性を模倣するメカニズムを自然に発達させる可能性が示された。治療開始前に臨床の場で綿密な遺伝子検査を行い、このような早期の耐性メカニズムを特定し、標的とすることで、一次治療の有効性を改善できる可能性がある。

 さらに驚くべきことには、続く解析において、ゲノム欠失は以前考えられていたよりも広範囲に及ぶ発癌と耐性のメカニズムである可能性が明らかになった。すなわち、BRAF遺伝子が正常に機能しているメラノーマや、非小細胞肺癌、乳癌、腎臓癌、前立腺癌などの他のタイプの癌にもaltBRAFのエビデンスを発見した。この発見により、現在臨床開発中の標的治療の恩恵を受ける患者数が増える可能性がある。

 「第二世代RAF阻害剤として知られる新しいクラスの薬剤がある。BRAF阻害剤とは異なり、これらの薬剤は幅広いスペクトルを持つため、altBRAFの機能を阻害する可能性がある。その有効性を評価する臨床試験は、BRAF遺伝子が正常に機能しているメラノーマ患者にも拡大されるべきであり、また、altBRAFを発現している他の癌種にも可能と思われる」と、論文筆頭著者のFrancisco Aya博士は言う。