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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Insights into the inhibition of protospacer integration via direct interaction between Cas2 and AcrVA5" Bi M, Su W, Li J, Mo X. Nat Commun. 2024-04-16. https://doi.org/10.1038/s41467-024-47713-7 [所属] Jilin U.
[構造情報]  PDB 8IA4: Crystal structure of Cas2 in complex with AcrVA5-peptide (分解能 2 Å)

 CRISPR-Casシステムにおける外来核酸の中のプロトスペーサーからスペーサーを獲得しCRISPRアレイに統合するadaptation (適応) のステップには、Cas1-Cas2複合体によるプロトスペーサーの認識とそれに続く統合が関与することが知られている。吉林大学の研究チームは今回、抗CRISPRタンパク質AcrVA5 [*]が、プロトスペーサーの統合を強力に阻害するメカニズムを明らかにした。
  • 生化学的データはAcrVA5の存在下でCas1-Cas2による統合が阻害されることを示した。
  • AcrVA5はCas2に対して低い結合親和性を示し、Cas2とAcrVA5のN末端ペプチド複合体の結合界面のLys55でCas2をアセチル化し、Cas2を介するエンドヌクレアーゼ活性を阻害する。
  • 今回X線結晶解析で決定した構造とホモログ構造 (PDB: 6IUF; 5XVN)との詳細な構造比較から、スクリーンショット 2024-04-17 20.28.49AcrVA5とCas2との結合が、隣接するプロトスペーサに対する立体障害を引き起こすことが明らかになり、電気泳動移動度シフトアッセイから、その結果Cas1-Cas2統合複合体が部分的に分解されることが、によって示された [Fig. 5の阻害機構のモデル図を右図に引用]。
 本研究は、このスペーサー獲得阻害のメカニズムに焦点を当てて、CRISPR-Casシステムの新たな生物学的知見を提供した。

[*]
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