[注] TFP1  https://en.wikipedia.org/wiki/TDP1  (Tyrosyl-DNA phosphodiesterase 1)
[出典] "Transcriptomic analysis of HEK293A cells with a CRISPR/Cas9-mediated TDP1 knockout" Dyrkheeva NS, Zakharenko AL, Malakhova AA et al. Biochim Biophys Acta Gen Subj. 2024-04-13. https://doi.org/10.1016/j.bbagen.2024.130616 [所属] Institute of Chemical Biology and Fundamental Medicine (Russia), AcademGene LLC (Russia) 

 TDP1はヒトのDNA修復タンパク質の一種であり、構造的類似性からホスホリパーゼDファミリーの一員とされている。TDP1は、停止したトポイソメラーゼ1 (TOP1)-DNA複合体の修復の鍵となる酵素である。ロシアの研究チームは先行研究で、CRISPR/Cas9を利用してTDP1遺伝子のホモ接合性ノックアウトしたヒトHEK293A細胞を樹立し、TDP1ノックアウト細胞モデルとして抗癌剤の作用機序を解析した。本研究では、TDP1ノックアウトがDNA修復関連遺伝子の発現を変化させるという仮説を立てて、ヒトHEK293A細胞株のトランスクリプトーム解析 (差次発現遺伝子解析)を3回繰り返した。

 その結果、TDP1がDNA修復以外の様々な細胞内プロセスに関与し、トポイソメラーゼとアンサンブルを形成していることを明らかになった。差次発現遺伝子 (differentially expressed genes: DEGs) として、15個の発現低下遺伝子と86個の発現上昇遺伝子が同定されたが、その中には、DNA修復酵素や因子は見られず、精子形成、細胞接着とコミュニケーション、ミトコンドリア機能、神経変性、MAPKシグナル伝達経路などの多様なプロセスに関与することが、明らかになった。
 
 本研究は、TDP1全般、特に様々な疾患の治療薬開発のターゲットとして研究している研究者にとって興味深い結果をもたらした。