[出典] "Secondary Conformational Checkpoint in CRISPR-Cas9" Zhao S, Liu J, Zuo Z. J Chem Theory Comput. 2024-04-16. https://doi.org/10.1021/acs.jctc.4c00120 [所属] Shanghai U Engineering Science, U North Texas Health Science Center;グラフィカルアブストラクト 

 CRISPR-Cas9遺伝子編集の精度向上を目指して、さまざまなCas9バリアントが開発されてきた。また、その精度が、Cas9システムの標的DNAへの結合から切断に至る間のチェックポイントに依存することが知られている。しかし、Cas9バリアントが分子レベルでどのように機能するかについての包括的な理解はまだ不十分である。

 著者らは今回、Cas9とCas9改変体の一つであるevoCas9 [*] を対象に、切断前状態から始まる後期コンフォメーション遷移の比較研究を行った。ミリ秒以下の動的シミュレーションの結果、塩基のミスマッチが存在すると、Cas9のHNHヌクレアーゼドメインのの主要な機能的運動様式が変化し、それによって標的DNAの切断に向けたコンフォメーションの活性化が損なわれることが明らかになった。この事象は、最終段階にDNA切断の活性化を微調整する二次的なコンフォメーション・チェックポイントが存在することを示唆している。

 驚くべきことに、evoCas9は塩基のミスマッチによって正常な活性化経路からより逸脱しやすい。これは、HNHドメインの位置の顕著なシフトと、酵素内のアロステリック情報伝達ネットワークの著しい乱れによって特徴づけられる。したがって、evoCas9で進化した変異は、以前に同定された一次チェックポイントに加えて二次チェックポイントも強化し、この変異体の高い遺伝子編集精度を総体的に保証している。

 今回同定した精度向上のメカニズムは、より忠実度の高い他のCas9ガイドRNA変異体にも当てはまるはずである。

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