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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Proteome-scale discovery of protein degradation and stabilization effectors" Poirson J [..] Taipale M. Nature 2024-03-20. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07224-3 [所属] U Toronto, Mount Sinai Hospital

 創薬において、標的タンパク質の分解と安定化は、その強力さ、多用途性、および、アンドラッガブルとされてきたタンパク質も標的可能とする有望なアプローチである。しかし、ヒトプロテオームに内在する数百のE3リガーゼや脱ユビキチン化酵素のうち、この目的に利用されているものはわずかであり、このアプローチの可能性はかなり限られている。また、これらのクラスのタンパク質以外にも、標的タンパク質の分解や安定化に利用できるエフェクター・タンパク質が存在する可能性もあるが、それらをスケーラブルかつ偏りのない方法で同定できる方法は今のところない。

 カナダの研究チームが今回、近接依存的に標的タンパク質の分解や安定化を促進するヒトタンパク質を機能的に同定するためのプロテオーム・スケールのプラットフォームを確立した [Fig. 1参照]。その結果、ヒトプロテオームにはタンパク質の安定化を促進するエフェクターが多数内在していることが明らかになった。さらに、このアプローチによって、ヒトE3リガーゼと脱ユビキチン化酵素の活性を包括的に比較することに成功し、非正規のタンパク質分解因子と安定化因子を同定し、その特性を明らかにすることができた。

 注目すべきことに、上位の分解因子は、現在使われているE3リガーゼであるセレブロンやVHLよりも、治療に関連する複数の標的に対してより強力であった。

 本研究は、標的タンパク質の分解と安定化のための安定化エフェクターの機能的カタログを提供し、新たな近接依存性タンパク質モジュレーターを発見するための誘導型近接性スクリーニングの可能性を示した。

[本論文におけるCRISPR技術の利用]
  • ゲノムワイドCRISPRスクリーニング:FCGR3B依存性分解の制御因子を同定するため、eGFP-ABI1とFCGR3B-vhhGFPを安定に発現する293T細胞を用いて、ゲノムワイドCRISPRスクリーニングを行った。
  • 293T細胞株からFBXO21PIGKPIGMまたはPIGTのノックアウトした細胞株を作出した。
  • 内在エフェクターのタギング:終止コドンの近く (200bp以内)を標的とするように設計した下流のsgRNAを用い、タグ・カセットを挟む短い相同領域を用いて、タギング用のの二本鎖切断を誘導した。

[論文中の図一覧]
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