2024-06-16 Nature Generics 誌Research Highlight記事引用
[出典] "RNA editing with CRISPR" Gross P. Nat Genet. 2024-06-13.
 https://www.nature.com/articles/s41588-024-01816-5
  • Nemudraiaらは、6塩基単位でRNAを切断するIII-A型CRISPR複合体を利用して、ヒト細胞において転写産物を配列特異的に欠失させるアプローチを実現した [Cas9によるDNAの配列特異的ノックアウトに相当]。
  • III-A型CRISPR複合体は、これまでもRNAのノックダウンに用いられてきたが、このCRISPR誘導RNA切断は、ヒト細胞内でRtcBリガーゼによって修復されるため、例えば遺伝子機能を回復させるようなプログラム可能なRNA編集が可能になる。
  • 著者らは、原理実証としてレポーター・プラスミド中の未成熟終止コドンを除去し、in vitroでのタンパク質発現を回復させるとともに、疾患対立遺伝子を持つヒト気管支上皮細胞において、CFTR転写産物中の臨床的に重要なナンセンス変異を除去した。
  • III型CRISPRシステムは、RNAガイドとRNAターゲットの間の相補性だけを必要とし、隣接する配列モチーフの存在に制限されないことから、このアプローチは極めて柔軟で適応性が高い。
  • 本研究は、治療への応用が期待されるRNAを正確に編集する汎用的な手段を提示した。
2024-04-30 Science 論文に準拠した初稿
[出典] "Repair of CRISPR-guided RNA breaks enables site-specific RNA excision in human cells" Nemudraia A, Nemudryi A, Wiedenheft B. Science 2024-04-25.
https://doi.org/10.1126/science.adk5518 [所属] Montana State U.

 CRISPR誘導エンドヌクレアーゼは、プログラム可能なDNA切断と新しい治療薬の開発を可能にした。第一世代のCRISPRゲノム編集では、Cas9ヌクレアーゼを用いて二本鎖DNA切断を行い、細胞によって修復されることで部位特異的な編集が行われた。モンタナ州立大学の研究チームは今回、III型CRISPRシステムのエフェクターを利用することで、RNAを対象として、切断と修復を経て部位特異的編集 (break-and-repair editing) が可能なことを示した

[詳細]

 DNA編集は遺伝病を治療する可能性を持つ一方で、ゲノムに意図しない変化をもたらしたり、有毒な細胞ストレス応答を引き起こしたりする可能性がある。対照的に、RNA編集はDNAを変えずに細胞プログラムを変えることができる。しかし、RNA編集の選択肢は限られている。VI型CRISPR誘導エンドリボヌクレアーゼであるCas13は、RNAノックダウンに使用されてきたが、標的認識は、非標的RNAを分解する付随的なヌクレアーゼ活性も活性化する。Cas13のヌクレアーゼ不活性化変異体 (dCas13) は、エクソンスキッピング、合成RNAペイロードのトランススプライシング、アデノシンからイノシン、シトシンからウラシルへの変換のための塩基編集酵素の配列特異的デリバリーに使われてきた [*1]。しかしながら、DNAエディターによって導入されるような、RNAにおけるプログラム可能な欠失は、これまで報告されていない。

 多用途かつ簡便なRNA操作の実現を目指して、モンタナ州立大学の研究チームは、生きた細胞内で配列特異的にRNAを編集する技術を開発した。この技術は、標的RNAのプログラム可能な切断に、V型CRISPRエフェクターのCas13に替えて、III-A型CRISPR複合体 [*2]を用いる。Cas13とは異なり、III型複合体は6ヌクレオチド単位で標的RNAを切断する。
 本研究は、生きた細胞におけるRNA操作の技術を確立し、新しいRNA修復経路を発見するアプローチを提示した。

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