[注] オリゴ糖転移酵素 (Oligosaccharyltransferase) 解説 [PDBj今月の分子] ;ドラッガブル (draggable / 創薬標的になり得る)
[出典] "Positive selection CRISPR screens reveal a druggable pocket in an oligosaccharyltransferase required for inflammatory signaling to NF-κB" Lampson BL, Ramίrez AS [..] Locher KP, Kaelin WG Jr. Cell 2024-004-25. https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.03.022 [所属] Dana-Farber Cancer Institute and Harvard Medical School, Institute of Molecular Biology and Biophysics (ETH), Yale U School of Medicine,  Broad Institute, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School

 核内因子κB (NF-κB) は様々な疾患に関与している。血中を循環するリポ多糖 (LPS) などの多くの炎症シグナルは、特異的受容体を介してNF-κBを活性化する。米国とスイスの研究チームは、NF-κBを介した自殺遺伝子を発現するLPSで処理した細胞の全ゲノムCRISPR-Cas9 KOスクリーニングを用いて、LPS受容体Toll様受容体4 (TLR4) が、N-グリコシル化と細胞表面局在化において、オリゴ糖転移酵素複合体OST-Aに特異的に依存していることを発見した。

 抗ウイルス性化合物NGI-1はin vivoでOST複合体を阻害することが知られているが、その根底にある分子メカニズムは不明のままであった。研究チームは、OST-Aの触媒サブユニットであるSTT3AのNGI-1耐性変異体のCRISPR塩基編集( NG-Cas9-ABE) による機能獲得スクリーニングを行った。これらの変異体とクライオ電顕法による構造再構成から、NGI-1がSTT3Aの触媒部位に結合し、そこでドナー基質dolichyl-PP-GlcNAc2-Man9-Glc3の分子を捕捉することが明らかになった。すなわち、STT3Aに薬物結合ポケットがあることが明らかになった。この結果は、STT3Aが創薬の標的である根拠を与えるとともに、塩基編集と構造研究の融合が、薬物の作用機序を明らかにする強力なアプローチであることを示した。

[注] 研究成果はグラフィカルアブストラクト に簡明にまとめられている。