[出典] NEWS "Chinese virologist who was first to share COVID-19 genome sleeps on street after lab shuts" Mallapaty S. Nature 2024-05-03. https://doi.org/10.1038/d41586-024-01293-0

 中国復旦大学の上海公共衛生臨床中心 (Shanghai Public Health Clinical Center: SPHCC) は公開論争を経て、COVID-19の原因ウイルスであるサーズウイルス2のゲノム配列を世界に向けて初めて公開したウイルス学者、張永振 (Zhang Yongzhen) の研究室を閉鎖した。その張氏が、日曜日 (4月28日)から研究室の外で'キャンプ'をしている様子が出回っている [例えば, CNN 2024-04-30 This Chinese virologist shared crucial Covid-19 data. Then his research hit hurdles]。

 SPHCCは「研究室は改修が必要ないくつかの研究室のひとつであり、張氏のチームに代替スペースを提供した」との公式声明を発表したが、Nature 誌の問い合わせには答えなかった。

 張氏による中国のソーシャルメデアである微博への投稿 (すでに削除されている) によると、研究所は研究チームに2日間の猶予を与えたが、SPHCCは当初、研究チームの移転先を指定しなかったという。その後、張氏によると、当局は未知の病原体を含むサンプルを保管するのに必要なバイオセーフティ条件を備えていない研究室に移動するようチームに伝えたという。張氏の研究室はバイオセーフティーレベル3の研究室であった。また、張氏は月曜日にNature 誌に「(自分の状況は)  ひどい (terrible)」「私が経験した事は貴方には理解できないでしょう」とだけ語った。

 SPHCCのウイルス学者であり、張のチームのメンバーであるChen Yanmeiの微博によると、学生達が行なっていた実験は修復不能になり、また、自分は研究室の中で'キャンプ'をしているとしていたが、Nature 誌の取材は拒否した。その後、「水曜日の早朝までに、SPHCCと暫定的な合意に達し、研究室での通常の研究活動を再開することになった」と投稿した。この投稿によれば、Chen氏はセンターと協力して研究室を移転し、研究を再開する予定であるという。

 張教授は2020年に、シドニー大学のウイルス学者Edward Holmesと共同で、サーズウイルス2のゲノム配列をオンラインフォーラムのVirological Virological に投稿することで、COVID-19に対するワクチンの迅速開発に貢献し、2020年の"Nature’s 10: ten people who helped shape science in 2020"に”Genome sharer"として取り上げられるなど国際的称賛を浴びた。

 しかし、長年の共同研究者であるHolmes教授によれば、2020年以降、共同研究が続くことはなく、張氏の研究成果は減少してきている。確かに、Dimensionsのデータベースによると、張氏は、2018年に5本、2019年に9本、2020年に18本の共著論文を発表していたが、2021年には3本、2022年には4本に減少した。2023年に6本の論文を共著しているが、いずれもオリジナルデータを含んでいない。

 SPHCCを率いるFan Xiaohong医師は中国紙『南方週末』に、張氏の契約は満了したが、彼は退職を拒否したと語った。張氏のソーシャルメディアへの投稿によると、彼自身とSPHCCとの契約は2023年に正式に終了したが、彼のチームのメンバーは病院との契約を更新しており、研究室にはまだ資金が残っているという。

  ニューヨークのシンクタンク、外交問題評議会 (Council on Foreign Relations: CFR) の中国医療政策の専門家であるYanzhong Huangは、この論争と抗議の本質は「謎に包まれている」と言う。