[出典] "Tumor Microenvironment-Responsive Nanocapsule Delivery CRISPR/Cas9 to Reprogram the Immunosuppressive Microenvironment in Hepatoma Carcinoma" He L [..] Wang Z, Gu J, Zhang Y. Adv Sci 2024-05-05. https://doi.org/10.1002/advs.202403858 [所属] The Fourth Military Medical U (西安), Joint Logistic Support Force (蘭州),  Northwest U (西安), General Hospital of Central Theater Command (武漢)

 癌免疫療法は様々な腫瘍で大きな有効性を示しているが、肝細胞癌 (HCC) に対する有効性はまだ限定的である。したがって、新たな免疫療法の標的を同定・攻略することで限界を突破する必要がある。これまでに、バイオインフォマティクス解析により、ストレス応答性サイトカインの一種である成長/分化因子15 (GDF15) が肝細胞癌で高発現し、肝細胞癌患者の予後不良と密接に関連していることが明らかになった。また、GDF15が腫瘍微小環境において免疫抑制を促進することが明らかになった。従って、遺伝子編集によってGDF15をノックアウトすれば、抑制的な腫瘍免疫微小環境を恒久的に逆転させることができる可能性がある。

 中国の研究チームは今回、HCCに特異的に結合するペプチド (SP94) で表面を修飾したナノカプセル (SNC) を利用して、GDF15を標的とするCas9-sgRNA RNPを送達するアプローチを試みた。このナノカプセルには、高レベルのグルタチオン (GSH) を特徴とする腫瘍微小環境においてその内容物が放出されるように、ジスルフィド結合が組み込まれている (以下, SNCSS)。

 HCCマウスモデル生体内において、SNCSSは肝細胞癌を標的とし、肝細胞癌の進行に対して顕著な抑制効果を示し、肝細胞癌の免疫療法を促進する。CyTOF分析から、肝細胞癌の免疫微小環境に望ましい好変化が進行し、キラー機能を有する免疫細胞が増加し、抑制機能を有する免疫細胞が減少することが明らかになった。さらに、GDF15を標的とする遺伝子編集によって、抗PD-1モノクローナル抗体の有効性が高まることが示された。安全性についても、この療法が細胞毒性も免疫原性も伴わないことが示された。

 これらの知見は、CRISPR-Cas9遺伝子編集システムが免疫微小環境を調節することで、肝細胞癌に対する既存の免疫療法の有効性を改善できることを、示唆している。