- 全ての生体分子間の相互作用の構造基盤が解けるAlphaFold3
[2024-05-10 9:45 記事タイトルのタイポAlpha3をAlphaFold3へと修正]
[出典]  
論文 "Accurate structure prediction of biomolecular interactions with AlphaFold 3" Abramson J, Adler J, Dunger J, Evans R, Green T [..] Bapst V, Kohli P, Jaderberg M, Hassabis D, Jumper JM. Nature 2024-05-08. https://doi.org/10.1038/s41586-024-07487-w [所属] Google DeepMind, Isomorphic Labs
NEWS "Major AlphaFold upgrade offers boost for drug discovery" Callaway E. Nature 2024-05-08. https://doi.org/10.1038/d41586-024-01383-z

 AlphaFold2は、タンパク質の構造とその相互作用のモデリングに革命をもたらし、オープンソースとして公表されたこともあり、タンパク質のモデリングと設計におけるかつてなく広大な応用を可能にした。今回、AlphaFold3Google DeepMindと、Google系列のAI創薬企業であるIsomorphic Labsの研究チームが、生成AIモデルの一種であり画像生成AIサービスを支える拡散モデル(diffusion model) を採用して、タンパク質とタンパク質の相互作用にかぎらず、核酸、低分子、イオン、修飾残基を含む複合体の構造予測を可能にし、AlphaFold3として、発表した [右図はAlphaFold3のWebサイトの画面キャプチャ]

 AlphaFold3モデルの精度は、さまざまな生体分子間相互作用それぞれに特化されたツールよりも大幅に向上している。タンパク質-リガンド相互作用に関しては、最新のドッキングツールよりもはるかに高い精度を示し、タンパク質-核酸相互作用に関しては、核酸特異的予測ツールよりもはるかに高い精度を示し、抗体-抗原予測精度はAlphaFold-Multimer[*] v2.3よりも大幅に高くなっている。これらの結果を合わせると、単一の統一されたディープラーニングのフレームワークで、生体分子空間全体にわたる高精度のモデリングが可能であることを示している。
[*] crisp_bio タンパク質フォールディング問題を解く: 易い、早い、上手い   - [2021-10-07 更新]の項:DeepMind,”AlphaFold-Multimer"をbioRxiv に投稿

 ワシントン大学Institute for Protein DesignのDavid Bakerは「AlphaFold3の構造予測性能はとても印象的です。(Bakerらが開発した)RoseTTAFold All-Atomよりも優れています」と言う。

 AlphaFold3はAlphaFold2がもたらしたタンパク質工学の新たなページを開いたが、AlphaFold2とは異なりAlphaFold3の利用はDeepMindのWebサイトを通じての非商用利用に限定されている。また、研究者が予測できる構造は1日10件に制限されており、薬物と結合する可能性のあるタンパク質の構造をモデルすることはできない。

 DeepMindのスピンオフ企業であり、AlphaFold3の論文にもその研究者が参画しているIsomorphic Labsは、自社のパイプラインとEli LillyやNovartisといった他の製薬企業のパイプラインを介して、AlphaFold3を創薬に利用している。