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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Triterpenoids-templated self-assembly nanosystem for biomimetic delivery of CRISPR/Cas9 based on the synergy of TLR-2 and ICB to enhance HCC immunotherapy" Zhang B, Lai C, Luo B, Shao J. Acta Pharm Sin B 2024-05-08. https://doi.org/10.1016/j.apsb.2024.04.033 [所属] Fuzhou U, Tenth Affiliated Hospital of Southern Medical U;グラフィカルアブストラクト (TLR-2経路による自然免疫活性化とCRISPR/Cas9によるPD-L1遺伝子治療の相乗効果を示す、CRISPR/Cas9を送達するバイオミメティックナノドラッグUR@Mを開発した) 

 癌免疫併用療法は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) 単剤療法と比較して、客観的奏効率を高める有望な可能性を示している。しかし、多剤併用療法は、薬剤の特性が異なることや、相乗的な標的送達が一貫していないことから、限界があった。中国の研究チームは今回、PD-L1を標的とするCRISPR/Cas9システムと五環性トリテルペンであるウルソール酸 (ursolic acid: UA) の自己組織化により作製した細胞膜被覆バイオミメティック・デリバリーナ・ノプラットフォーム (UR@M) による肝細胞癌治療法を考案した。

 UR@Mは、生体内での腫瘍集積性が向上し、ナノシステム内のCRISPRは、in vitroで76.53%、in vivoで62.42%の強力な遺伝子編集効率を示し、オフターゲット効果は認められなかった。

 UAは、TLR-2-MyD88-TRAF6経路を通じて自然免疫系を活性化し、PD-L1のICBと組み合わせることで、ナチュラルキラー細胞と樹状細胞の増殖を相乗的に高め、優れた免疫細胞傷害性T細胞浸潤を実現した。

 今回の、自然免疫と適応免疫の双方を活性化する戦略は、腫瘍の退縮に大きな効果を示し。全体として、UAを用いた戦略は、自己組織化ナノシステムを確立し、腫瘍細胞死を誘導し、肝細胞癌治療のための相乗的な免疫賦活を促進することで、「一石三鳥」であった。
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