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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] “Enhancing genome editing in hPSCs through dual inhibition of DNA damage response and repair pathways” Park JC [..] Cha HJ. Nat Commun. 2024-05-11. https://doi.org/10.1038/s41467-024-48111-9 [所属] Seoul National U, Seoul National U College of Medicine

 
 正確なゲノム編集は、ヒト疾患モデルの樹立や、患者由来のhPSCからのex vivo幹細胞治療に極めて重要である。Cas9を介したノックインとは異なり、シトシン塩基エディター (CBE)とプライムエディター (PE) DNA二本鎖切断 (DSB)を誘発することなく、望ましい遺伝子修正を達成する。しかしながら、体細胞や癌細胞と異なり、hPSCは非常に活性の高いDNA修復経路を持ち、p53依存性の細胞死に対する感受性が高いことから、hPSCにおける遺伝子編集効率は低い。韓国の研究チーム、CBE (シトシン塩基エディター) あるいはPE (プライムエディター) によるDNA損傷時に、p53を介した細胞死の二重阻害とDNA損傷修復系の明瞭な活性化が、hPSCにおける編集効率を相加的に高めることを実証した。

  • CBEの一種であるAncBE4については、ドミナントネガティブp53であるp53DDと、塩基除去修復 (BER)を特異的に阻害するように設計された3種類のUNG阻害剤を加えたAncBE4stemシステムによってその効率が改善された。
  • PE4に対しては、p53DDとミスマッチ修復活性 (MMR) を阻害するドミナントネガティブMLH1を加えたPE4stemシステムによってその効率が著しく向上した。

 本研究で報告したAncBE4stemおよびPE4stemは、オフターゲット効果、大きな欠失、および意図しないトランスクリプトーム/ゲノム全体のオフターゲット効果の顕著な発生を伴うことなく、hPSCにおける編集結果に対する相加的効果を容易に達成する。

 一般にも、遺伝子編集時にhPSCで関与する異なる細胞カスケードを複合的に阻害することで、hPSCにおける正確なゲノム編集が著しく向上する可能性がある。

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