[出典] REVIEW “Elevating fetal hemoglobin - recently discovered regulators and mechanisms” Blobel GA, Khandros E. Blood 2024-05-10. https://doi.org/10.1182/blood.2023022190 [所属] Children's Hospital of Philadelphia

 半世紀以上前から、ヒトは、α-およびβ-様ヘモグロビン鎖の4量体であるヘモグロビンを、個体発生を通じて異なる形で産生することが知られていた。すなわち、胎児ヘモグロビンから成人ヘモグロビンへの転換 (スイッチ)が、赤血球造血が胎児の肝臓から骨髄に移行する出生前後に起こる。当然ながら、鎌状赤血球症やβ-サラセミアなど、成人βグロビン遺伝子の欠陥によって引き起こされる疾患は、胎児ヘモグロビンの産生が衰えるにつれて発現する。この発生的スイッチの逆転は、これらの疾患を治療するための主要な目標であり、その根底にある分子生物学を理解する原動力となってきた。

 これまでに、いくつかの総説が、この過程に関与する最初の転写制御因子を発見するに至るまでの、長く、時には困難な道のりを説明してきた。ここでは、CRISPRツールの発見によって胎児ヘモグロビンから成体ヘモグロビンのスイッチに関与する分子のハイスループット遺伝子スクリーニングが初めて可能になったことを契機に急速に進んだ最近の進展をレビューする。また、その成果をベースに治療介入の機会が数多く明らかになり、遺伝子治療が困難な患者に対する効果的な薬理学的介入に希望が持てるようになった。