[出典

[論文要旨]

 Jiankun Lyu (当時 UCSF)らは、σ2受容体と5-HT2A受容体の未精製のAlphaFold2モデルに対して、大規模なライブラリーをドッキングし、何百もの新しい分子をテストし、結果を実験構造に対するドッキングと比較した。ヒット率は高く、AlphaFold2による予測構造と実験からの構造は同様であり、親和性も同様であった。また、AlphaFold2モデルに対するドッキングが、実験構造に見られるオルソステリック残基のコンフォメーションの違いにもかかわらず、達成された。AlphaFold2ドッキングから、より強力な5HT2Aリガンドの1つのクライオ電顕構造を決定したところ、AlphaFold2予測に類似した残基の配置が明らかになった。AlphaFold2モデルは、実験構造とは異なるが、低エネルギーでリガンド探索に関連するコンフォメーションをサンプリングすることができ、構造に基づくリガンド探索の領域を拡大することができる。

[低分子ライブラリーおよび構造情報]

[Jiankun Lyuインタビュー]

 Lyuは「2種類の創薬ターゲットにおいて、AlphaFold2モデルは、創薬に必要な結合分子であるリガンドを発見するプログラムの入力として使用した場合、実験的に決定された構造と同じくらい信頼できることが、判明した」と言う。Lyuはロックフェラー大学における対談 (Q & A) において、この技術の最新バージョンであるAlphaFold3の将来性、ディープラーニングの限界、そしてそれらが創薬にとって何を意味するのかについて、述べた。

Q) Science 論文は、AlphaFoldが医学を発展させるどのような可能性を示唆していますか?

 これまでの研究から、AlphaFoldは構造ベースのリガンド探索において実験的手法に劣るだろうと予想していた。今回のプロスペクティブスタディーにおいて、実験的に得られた構造に極めて近いAFモデル構造があることは驚きであった。およそ3分の1のケースで、AlphaFoldが予測した構造が、プロジェクトを大幅に加速させる可能性があると見積もられる。これは、実験的手法で新しい構造を得るのに比べ、プロジェクトのスケジュールを最大で数年早められる可能性があることを意味している。

Q) AlphaFold3がもたらしたものは?

 AlphaFold3AlphaFold2から画期的にアップグレードされている。AlphaFold2Multimerアドオンによってのみ、いくつかのタンパク質複合体を予測することができた。しかし、最新のモデルは翻訳後修飾と低分子タンパク質複合体を予測することができる。簡単に言えば、このAIDNARNA、その他の分子を含むタンパク質分子複合体を予測できるようになったというのが開発者の主張だ。

 問題は、AlphaFold3がブラックボックスであることだ。

 AlphaFold2が最初にリリースされたとき、モデルが公開され、ユーザーが予測できるタンパク質の数に制限がなかった。その結果、Science 論文のように、多くの研究者が基礎科学や創薬におけるアルゴリズムや広範なアプリケーションを調査することができた。AlphaFold3は、残念ながらサーバー上でしか利用できず、モデルが公開されておらず、1日に予測できる構造数は限られている。今後半年以内にこの方針を変更し、透明性を高める可能性もあるようだ。しかし、もし彼らが学術的なスクリーニングのためにもモデルを公開しないのであれば、今回の研究がこの種の最後のものになるだろう。私たちはAlphaFold3で今回の研究を実施することはできなかっただろう。そうした環境では、新しいモデルがリガンド発見などの創薬のテンプレートとして優れているかどうかを知ることはできない。

Q) オープンな環境が失われることで、AIと医療の未来は楽観的に見られなくなるのでしょうか?

 個人的には意気盛んです (enthusiastic)! 

 しかし、現在多くのAIが過剰に約束され、過小に提供されているため、私は慎重になってはいます。そうしなければ、生物医学におけるAIは頓挫し、単なる誇大広告に終わってしまうのではないかと懸念しています。

Q) AI創薬の未来は明るいのでしょうか?

 もちろんです。これは最もホットな研究分野のひとつであり、基礎研究と産業界の両方において、タンパク質複合体を正確に予測するための巨大な市場があります。基礎研究では、多くの生物学的反応におけるクロストークを解明するために、関心のある複合体の3Dモデルが必要です。産業界では、これらのモデルがより正確で入手しやすくなればなるほど、治療標的と相互作用する抗体やナノボディの生物製剤、あるいは低分子医薬品の高精度な手がかりを得やすくなります。それだけで創薬が完了するわけではありませんが、効率よく正確なモデルを得ることは、さらなる薬の最適化を導く重要な初期段階なのです。

 かつては、AIやディープラーニング・モデルがこの種のことをできるようになるとは思っていない人が大勢いました。しかし、その可能性はますます高まっている。

Q) AI企業の透明性を高める他に、深層学習モデルを創薬の実用的なツールにしていくためには何が必要だろうか?

 AIが生物医学に貢献可能なことが多くの研究チームによって示されてきたが、AIを学習させるための実験データの入手がボトルネックになっています。

 これまでにAIが成果をあげた分野は、基礎科学が実験的に多くのデータを生み出している分野です。したがって、多くのAIアーキテクチャーを手に入れた今、研究者はベンチに戻り、より質の高いデータを生成し、より良い予測を生み出すまで、データを必要とするアルゴリズムに供給する必要があります。それがブレークスルーをもたらすだろう。

[Science論文著者所属]

UCSF, U North Carolina at Chapel Hill School of Medicine, Harvard Medical School, Stanford U School of Medicine, Chemspace LLC (Ukraine), Taras Shevchenko National U Kyiv, Enamine Ltd (Ukraine)