[注] 本記事はCas12/13/14 バイオセンサー(6) の広がり の続き; 今回から記事タイトルをCRISPRDxに改訂; CRISPRDx (2)へと続く

2024-06-03
CRISPR/Cas13aをベースとする超高感度循環腫瘍DNAアッセイ法による血漿中のEGFR変異検出
[出典] “CRISPR/Cas13a-based supersensitive circulating tumor DNA assay for detecting EGFR mutations in plasma” Wang L, Wen X [..] Liu Q, Liu T, Luo D. Commun Biol. 2024-05-28. https://doi.org/10.1038/s42003-024-06368-2 

 血中循環腫瘍細胞由来DNA (circulating tumor DNA; ctDNA) の変異検出における最近の技術的進歩にもかかわらず、HiACE 1C現行の方法では感度とカバー率が未だ不十分であり、特に、低頻度の変異同定が課題として残っている。中国の研究チームが今回、HiCASEと称するctDNA変異検出のための超高感度かつ特異的な技術を実現した [Fig. 1引用右図参照]

 HiCASE (High-sensitivity PCR-Cas13a with Specific restriction Enzyme detection) は、CRISPR/Cas13aシステムにPCR増幅および制限酵素 (RE)による消化の前処理を加えたシステムである。まず、血漿サンプルから抽出したcfDNAPCRで増幅する。次に、標的配列がRE部位を持つ場合、PCR産物はREによって選択的に消化される。最後に、消化産物はCas13a/crRNAによって検出される。この混合物中で、DNA産物はT7プロモーターを通して標的RNAに転写され、Cas13a/crRNA複合体はスペーサー配列を介して標的RNAを認識し、それを切断する。その結果、Cas13aは非特異的にssRNAレポーターを切断するようにトリガーされ、蛍光装置を通して検出することができる。

 HiCASEの性能は、非小細胞肺癌 (NSCLC) の検出を目的として、一連のEGFR変異の検査にて検証した。HiCASE 4その結果、40ngの細胞遊離DNAを標準として0.01%の検出感度を達成した。120名のNSCLC患者の血漿140検体からなるパネルに適用した場合は、HiCASE40μLの血漿で88.1%の臨床感度と100%の特異性を示し、ddPCRSuper-ARMSアッセイよりも高い値を示した [Fig. 4引用右図参照]。さらに、HiCASEは、1%の変異対立遺伝子頻度で、異なる位置のT790M/C797S変異を明確に判別した。

[著者所属機関] Southern Medical U, Huazhong U Science and Technology Union Shenzhen Hospital, Shenzhen U Medical School, Translational Medicine Institute (Chenzhou), DAAN Gene (Guangzhou) 

2024-06-02
Sherlock Biosciences, 性感染症検査の臨床試験を開始

[出典] NEWS “Sherlock Biosciences Starts Clinical Trial of Disposable Molecular STI Test vs. Central Lab TestsSherlock Biosciences 2024-05-30. https://sherlock.bio/sherlock-biosciences-starts-clinical-trial-of-disposable-molecular-sti-test-vs-central-lab-tests/

 Sherlock Biosciences社が、Sherlock STI (Sexually-transmitted Infections/性感染症)使い捨て分子診断法の性能を、ゴールドスタンダードである中央検査室でのPCR検査と比較評価する多施設臨床試験であるPROMISE試験の最初の参加者が登録されたことを発表した。Sherlock検査は、クラミジア (Chlamydia Trachomatis; CT)と淋菌 (Neisseria Gonorrhoeae; NG )に対する最初の使い捨て分子診断法のひとつである。スワブで自己採取したDNARNAを分析することにより、30分以内に検査結果が得られる。

 本治験は、米国内の20の研究施設で約2500人の被験者を登録し、14歳以上の症候性・無症候性の性行為を行う一般ユーザーを対象としている。

2024-06-01
コンパクトなCas12f1ヌクレアーゼと人工ガイドRNAを用いた二本鎖DNA標的の効率的、特異的、直接的検出

[出典] “Efficient, specific and direct detection of double-stranded DNA targets using Cas12f1 nucleases and engineered guide RNAs” He J, Hu X [..] Deng Z. Biosens Bioelectron. 2024-05-24. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116428 [所属] Hengyang Medical School (U South China), U New South Wales.

 Cas12f1 (Cas14a1)はサイズが529aaと小型であり、一本鎖DNA (ssDNA)またはRNAを認識することで、ssDNAをトランス切断する活性を発揮する。この特徴を活かして、ssDNARNAのバイオセンサーとして2018年にCas14-DETECTR、そして、2021年にATCasRNAが開発されたが、二本鎖DNA (dsDNA) 検出には適していなかった。しかし、2020年になってCas12f1が、PAM依存的にdsDNAを同定・切断し、また、dsDNAの活性化によりssDNAをトランス切断することが示唆された。

 その後、Cas12f1タンパク質の改変とsgRNAの改変を介してCas12f1の活性を高める研究が続いた。南華大学を主とする研究チームは今回、最適化されたCas12f_ge4.1 [] システムをリコンビナーゼ・ポリメラーゼ増幅 (RPA) と統合し、dsDNAを直接高精度で検出可能にし、また、一塩基変異 (SNV) の識別も可能するPDTCTR (PAM-dependent dsDNA Target-activated Cas12f1 Trans Reporter) プラットフォームを開発した。

  • PDTCTRは、オリジナルのCas12f1システムの100倍以上の検出感度を示す。
  • PDTCTRは、肺炎マイコプラズマ (M. pneumoniae) B型肝炎ウイルス (HBV)の検出限界10コピー/μL (16.8アトモル) を達成した。
  • 非小細胞肺がン (NSCLC) に広く見られるEGFRL858R)変異を含む一塩基変異 (SNV)を高精度で識別した。
  • PDTCTRの臨床評価では、その感度と特異性がそれぞれ93%100%100%であることが実証され、感染症や癌関連SNVの診断アプローチに革命をもたらす可能性が強調された。

[Cas12f1関連crisp_bio記事]


2024-05-31
PAMフリーなCas14aをベースとするバイオセンサーによるチフス菌の超高感度検出
[出典] “Ultrasensitive detection of Salmonella typhi using a PAM-free Cas14a-based biosensor” Wei Y, Hu Y [..] Yang Z, Mao H, Wan Y. Biosens Bioelectron. 2024-05-20.
https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116408 [所属] Hainan U, Products Quality Supervision and Testing Institute of Hainan Province, Institute of Polymer Chemistry and Physics (タシケント)

 病原微生物の検出に広く利用されているCRISPR-Cas14a1の有効性は、標的DNA鎖上にPAMが必要であるために制限されてきた。この制限を克服するために、中国とウズベキスタンの研究チームは、PAM配列に依存しないチフス菌 (Salmonella typhi)検出用のSingle Primer isothermal amplification integrated-Cas14a1 (SPCas)バイオセンサーを開発した。

 SPCasバイオセンサーは、RNA-DNAプライマーと、標的遺伝子の存在下で同じ一本鎖DNA (ssDNA) に結合できる3′-ビオチン修飾プライマーを特徴とする新しいプライマーをベースにしている。RNA-DNAプライマーの増幅がビオチン修飾末端でブロックされ、続いて、鎖置換が開始され、RNase HBst酵素を介してssDNAが生成され、PAM配列が存在しなくても、Cas14a1のトランス切断活性が活性化される。

 環状の鎖置換反応増幅とCas14a1トランス切断活性の両方を活用することで、SPCasバイオセンサーは5 CFU/mLの驚くべき診断感度を示し、さらに、20件の生乳サンプルの評価において、qPCRによる結果と整合する診断精度を示した。

2024-05-29

互いに直交するCRISPR-Casプラットフォームによる血中循環エクソソームの同時多重フェノタイプ解析

[出典] “Simultaneous and multiplexed phenotyping of circulating exosomes with the orthogonal CRISPR–Cas platform” Su G [..] Yu Y. Chem Commun. 2024-05-20. https://doi.org/10.1039/d4cc00497c [所属] Nantong U, Yixing Fifth People's Hospitalグラフィカルアブストラクト 

 中国の研究チームが互いに直交するCRISPR-Casプラットフォームによるエクソソーム・タンパク質の同時多重プロファイリングがを実現した。アプタマーを利用して、エクソソーム表面タンパク質情報をCas12a/Cas13a切断活性に変換する。確立された多重化プラットフォームは、生物学的マトリックスにおいて頑健に作動し、臨床血清サンプル中のエクソソーム・タンパク質のプロファイリングを可能にした。

2024-05-27
全ゲノムシーケンスデータからCRISPRおよび増幅に基づく診断アッセイの設計を支援するPythonパッケージ

[出典] “Krisp: A Python package to aid in the design of CRISPR and amplification-based diagnostic assays from whole genome sequencing data” Foster ZSL, Tupper AS, Press CM, Grünwald NJ. PLoS Comput Biol. 2024-05-20. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1012139 [所属] USDA Agricultural Research Service

 CRISPRシステムをベースとするアッセイ法は使いやすく安価なテストストリップとして展開することができる。しかし、プライマーの設計が可能な保存領域に挟まれたゲノムの診断領域を発見するには、ゲノム配列の広範なバイオインフォマティクス解析が必要である。

 USDAの研究チームは今回、アラインメントされていないゲノム配列またはバリアントコールフォーマット(VCF)ファイルを入力として、サンプル群を互いに区別するプライマーと診断配列の発見を支援するPythonパッケージkrispを開発した。

 Krispは、線形に近い時間で実行され、メモリーは最小限で十分であり、必要に応じて並列処理が実行される効率的なアルゴリズムを使用することで、大規模なデータセットを処理できるように最適化されている。

 Krispの実証実験において、Phytophthora ramorumと近縁のPhytophthora種を区別するCRISPR Dxを実現した。

2024-05-25
CRISPR Cas12aによるシグナル増幅に, アプタマーとDNAウオーカーによる3Dローリングマシンを組み合わせたナノバイオセンサーによる癌胎児性抗原の超高感度検出

[出典] “Three-dimensional DNA nanomachine biosensor coupled with CRISPR Cas12a cascade amplification for ultrasensitive detection of carcinoembryonic antigen” Yao S [..] Zhao C, Wang J. J Nanobiotechnology. 2024-05-18. https://doi.org/10.1186/s12951-024-02535-z [所属] Jilin U

 癌胎児性抗原 (carcinoembryonic antigen; CEA) は癌の早期診断に有用なバイオマーカであるが、現在の検出法は、アクセシビリティと特異性が不十分である。中国の研究チームが今回、Three-dimensional DNA nanomachine15.09.403次元Roling MachineCRISPR-Cas12aシグナル増幅を組み合わせて、核酸増幅の前処理を必要とせず、ユーザーフレンドリーで、迅速、高感度、特異的なアッセイ法を開発した。このアッセイ法はFig. 1引用右図に示すように、ターゲット認識のためのDNAローリングマシンFe3O4@Au-TrackDNAzyme/Mn2+切断、CRISPR-Cas12aコラテラル活性を介したシグナル増幅で構成される

[注]DNAローリングマシンの構成と動作は次のとおり:AuNPCEAに高い親和性を持つアプタマーとアプタマーとウォーカーDNA複合体で修飾したAu-ウォーカーを作製し、Fe3O4@Au NPTrack DNAで機能化することで、Fe3O4@Au-Trackが生成される。CEAの存在下では、ウォーカー鎖が放出され、DNAローリングマシンが活性化され、トラックDNAの酵素断片 (T0) が生成される。このT0が、CRISPR-Cas12aのシスおよびトランス切断活性を誘導する標的DNAとして働く。

 本検査法は、核酸増幅および転写のプロセスを回避したことで、偽陽性および偽陰性のリスクが低減され、検査の信頼性を高めるに至った。本検査法は75分以内に完了し、標準CEALOD0.2ng/mLであり、市販のELISAキットと比較して、臨床検体中のCEA測定において優れた実用的性能を示す。

2024-05-23
人獣共通感染症を引き起こすブルセラ菌の迅速同定に向けたin silico解析とCRISPR/Cas12aバイオセンサー
[出典] “Rapid Identification of Brucella Genus and Species In Silico and On-Site Using Novel Probes with CRISPR/Cas12a” Zhang Y, Liu Y [..] Wang Y, Liu X. Microorganisms. 2024-05-17. https://doi.org/10.3390/microorganisms12051018 [所属] Shanghai Ocean U, Beijing Institute of Biotechnology, Laboratory of Advanced Biotechnology (Beijing), Lanzhou Veterinary Research Institute, Shihezi U

 ヒトのブルセラ症を引き起こすBrucella属のメンバーとOchrobactrum sppのメンバーとの間には高い相同性があるため、ブルセラ属菌の効率的で信頼性の高い同定と識別が、医療サーベイランスとアウトブレイク対策に重要な課題である。

 中国の研究チームは今回、ブルセラ属の大量のゲノムデータのin silico解析から新たに発見した一塩基多型 (SNP) を含む126プローブ (以下、eProbes)をベースに、ブルセラ菌の迅速同定を可能にするGAMOSCE v1.0ソフトウェアを開発・公開した [Figure 1引用右図参照]。また、B. abortusB. melitensisを蛍光およびラテラルフローディップスティック (LFD)でオンサイトで判定可能とするRPA- Cas12a検出法を開発し、臨床血液サンプルおよび獣医分離株における検出において優れた性能を実証した。

2024-05-19
環状RNAを超高感度かつ高特異度で検出可能とするワンポットRT-RCA-Cas12a戦略
[出典] “A one-pot CRISPR-RCA strategy for ultrasensitive and specific detection of circRNA” Ke X, Liang A, Chen C, Hu T. Anal Methods 2024-05-10. https://doi.org/10.1039/d4ay00693c [所属] Zhejiang U School of Medicine, Tongji U, U Jinan, Hangzhou Medical College. 

 環状RNAの正確かつ精密な検出は、その臨床的利用にとって不可欠であるが、その検出には、微量なこと、および、直鎖異性体の干渉から生じる課題があり、革新的な解決策が必要である。

 中国の研究チームが今回、RETA-CRISPR (REverse Transcription-rolling circle Amplification (RT-RCA) with the CRISPR/Cas12a) と称する、ワンポット反応、迅速 (30分~2時間)、高特異度かつ超高感度な環状RNA検出戦略を確立した。

 RETA-CRISPR2つのステップからなる: (1) RT-RCAで環状RNAを増幅し、バック・スプライシング・ジャンクション (back splicing junction: BSJ) 配列を含むリピートユニットを生成する。(2) PAMに依存しないCas12a/crRNA複合体を利用して、BSJで標的配列を正確に認識し、それによってCas12aのコラテラル切断活性を開始させて、強固な蛍光シグナルを生成する。

 このRETA-CRISPRは、300 aMという極めて低濃度の環状RNAを検出する能力を示した。また、様々な細胞株において、肝細胞癌のバイオマーカーとなりうるhsa_circ_0001445 (circRNA1445) の正確な検出に成功した。