- 脳細胞の6%以上を標識可能; 1回に3万個以上の細胞において, 摂動がトランスクリプトームに与える影響を単一細胞分解能で捉えることが可能
2024-06-21 6月20日に冊子体出版 (VOLUME 187, ISSUE 13, P3236-3248.E21, JUNE 20, 2024)

[出典] “Massively parallel in vivo Perturb-seq reveals cell-type-specific transcriptional networks in cortical development” Zheng X [..] Jin X. Cell 2024-05-20. https://doi.org/10.1016/j.cell.2024.04.050 [著者所属文末に

 AAV Perturb-seq GA米日の研究チームが、AAVsの多様なトロピズムと標識能力 (labeling capacity) を活用して、Perturb-seq技術の高速化と多重化を推し進め、超並列生体内 Perturb-seq (massively parallel in vivo Perturb-seq)プラットフォームに到達した。

 このプラットフォームにより、胚から成体脳、末梢神経系にわたり、単一細胞分解能でのトランスクリプトミクスが可能になり、機能ゲノミクスのツールボックスが拡充された [Graphical abstract引用右図参照]

 研究チームはまず、AAVsのさまざまな血清型にわたる86種類のベクターをバーコードを付したライブラリーをマウス子宮内 (in utero)でスクリーンし、AAV-Perturb-seq 1生体内で48時間以内に迅速かつ強固な導入遺伝子の発現を可能にするAAV-SCH9を含むいくつかの血清型を同定した [Fig. 1引用左図参照]。さらに、ガイドRNA (gRNA) の持続的発現を確実にするために、このベクターにトランスポゾンシステムを組み合わせた。

 次に、原理証明実験として行なった子宮内遺伝子スクリーニングにおいて、一連の転写因子 (TF) が多様なニューロン集団に与える細胞タイプ特異的作用を同定した:神経発達遅延に強く関連するFoxg1の機能喪失は、他のTFネットワークを抑制することにより、主に第6層皮質視床 (L6-CT)ニューロンに影響を与えた。一方で、この作用は、L6-CTニューロンに極めて特異的であり、同系統・同層の他の細胞タイプでは観察されず、Foxg1の細胞コンテクスト依存的な制御メカニズムが明らかになった。

 特筆すべきことに、超並列生体内 Perturb-seqによって、脳細胞の6%以上が標識可能になり、これは、現在の最先端技術であるレンチウイルスによる標識の0.1%未満という限界を大きく突破し、また、1回の実験で3万個以上の細胞において摂動 (perturbation)がトランスクリプトームに与える影響を単一細胞分解能でプロファイリングすることが可能になった。

 さらに、この超並列生体内Perturb-seqは、様々なフェノタイプ測定 (単一細胞または空間的マルチオミクス) と互換性があり、GWASなどで発見される疾患関連遺伝子変異の生物学的意義の同定をはじめとする機能ゲノミクスに貢献することが期待される。

[プラスミド入手先Xin Jin Lab Materials https://www.addgene.org/Xin_Jin/

[In vivo Perturb-seq関連文献/crisp_bio記事]

 In vivo Perturb-seqは、プール型CRISPRスクリーニングに読み出しとしてscRNA-seqを使用することでトランスクリプトームを体系的にプロファイルすることで、摂動 (perturb)の効果を多様な脳細胞のタイプに亘って多重並列で同定可能とする手法

[著者所属Scripps Research, Broad Institute of MIT and Harvard, UC Irvine, Weill Cornell Medicine, 早稲田大学[*]; [*] Zi Chao Ngiam, 大手直人, 花嶋かりな; Foxg1-lacZ reporter analysis

[責任著者Xin JinX投稿を以下に引用