[注] MGDrivE 3 (Mosquito Gene Drive Explorer 3)
[出典] “MGDrivE 3: A decoupled vector-human framework for epidemiological simulation of mosquito genetic control tools and their surveillance” Mondal A, Sánchez C HM , Marshall JM. PLoS Comput Biol. 2024-05-28. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1012133 [所属] Divisions of Epidemiology and Biostatistics (UC Berkeley)
CRISPRベースの遺伝子ドライブなど、新しい蚊の遺伝子制御ツールは、昆虫媒介性疾病の地球規模の公衆衛生への負荷を軽減する上で大きな可能性を秘めている。これらの技術が研究開発パイプラインを進むにつれ、ロジスティックスやバイオセーフティに関する疑問に対処するため、昆虫学的および疫学的な詳細レベルを組み込んだモデリングフレームワークの必要性が高まっている。疫学的予測は、標的製品プロファイルの開発、野外試験や介入の設計にますます必要とされており、また、昆虫学的サーベイランスが、規制やバイオセーフティにとってますます重要になってきている。
UCバークレー校の研究チームは以前、様々な蚊の遺伝的制御システムの空間的な個体群動態をモデル化するために、MGDrivE (Mosquito Gene Drive Explorer) を開発し [*1]、また、マラリアとアルボウイルス伝播の単純なモデル、蚊個体群の季節性、確率的ペトリネット (stochastic Petri nets; SPN) を利用した蚊と人間の状態空間の新しい定式化を組み込んだMGDrivE 2 [*2]を開発した。今回は、MGDrivE 2の新バージョンであるMGDrivE 3を紹介する:
i) モデルにおいてヒトと蚊のとヒトの部分を容易にモジュール化可能にするようなサンプリングアルゴリズムを採用することで [Fig.1引用右図参照]、MGDrivEの蚊の部分をより詳細な疫学的フレームワークと組み合わせることを可能にした。
ii) インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のマラリア感染モデルから、年齢構造、様々な免疫形態、ヒトと媒介蚊の介入、より意味のある疾病データ (年齢構造化された罹患率、有病率、死亡率)を組み込んでいる、
iii) シミュレーション期間中、トラップで捕獲した蚊を追跡するサーベイランス機能を付加した。
これらによって、寄生虫の伝播が蚊の遺伝子型によってモデル化され、遺伝子制御の介入は他の介入(長期残効型蚊帳、屋内残留散布、抗マラリア薬など)と並行してモデル化され、蚊トラップの力学的およびサーベイランス効果もモデル化されるようになった。
本研究ではさらに、CRISPRに基づくホーミング遺伝子ドライブシステムを、デュアル疾患遺伝子にリンクさせ、低伝染性の島嶼環境におけるマラリア感染に応用した例を示す。また、蚊取り網による同様の遺伝子ドライブシステムのサーベイランスのシミュレーションも紹介する。最後に、昆虫媒介性疾患の制御を目的とした蚊の遺伝子制御ツールの開発と応用におけるMGDrivE 3の今後の方向性と応用について考察する。
MGDrivE 3は、オープンソースのRパッケージとして、CRAN (https://cran.r-project.org/package=MGDrivE2) [*](version 2.1.0)にて公開している。
[*] 2024-06-06時点で、公開された論文中のURLはMGDrive 2へのリンクになっている。
研究チームは、このソフトウェアが蚊の遺伝子制御ツールの人体への影響と生物学的安全性の理解を助けることを目指しており、遺伝子制御コミュニティからのフィードバックに従って改良を続けている。
[*] 先行研究論文
- ”MGDrivE: A modular simulation framework for the spread of gene drives through spatially explicit mosquito populations” Sánchez C HM, Wu SL, Bennett JB, Marshall JM. Methods Ecol Evol. 2019-10-16. https://doi.org/10.1111/2041-210X.13318
- “MGDrivE 2: A simulation framework for gene drive systems incorporating seasonality and epidemiological dynamics” Wu SL, Bennett JB, Sánchez C HM, Dolgert AJ, León TM, Marshall JM. PLoS Comput Biol 2021-05-21. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1009030
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