- COVID19ワクチン接種と2020年米国大統領選挙を例として
[出典] PERSPECTIVE “A broader view of misinformation reveals potential for intervention” van der Linden S, Kyrychenko Y. Science 2024-05-31. https://doi.org/10.1126/science.adp9117
[*] 引用文献
- “Quantifying the impact of misinformation and vaccine-skeptical content on Facebook” Allen J, Watts DJ, Rand DJ. Science 2024-05-31. https://doi.org/10.1126/science.adk3451 [所属] MIT, U Pennsylvania
- “Supersharers of fake news on Twitter” Baribi-Bartov S, Swire-Thompson B, Grinberg N. Science 2024-05-30. https://doi.org/10.1126/science.adl4435 [所属] Ben-Gurion U (Israel), Northeastern U.
誤報は、世界中の科学、公衆衛生、民主主義に対する脅威とみなされている。専門家は、誤報を偽情報 (false information)と誤解を招く情報 (misleading information)に分類しているが、分類する有効性は定かではなかった。この展望記事は、同じScience 誌から刊行された、Allenら [*1]とBaribi-Bartov [*2]が、偽情報と誤解を招く情報の影響を分析した2つの論文をハイライトしている。
Allenらは、Facebookにおいて、誤報としてフラグが立てられていないにもかかわらず、COVID-19ワクチン接種に関して誤解を招くような見解を示しているコンテンツが、より広い層に届く結果、全くの偽情報 (デマ) よりも、より多くの人々をワクチン接種を避ける行動に向かわせたことを、発見した。
Baribi-Bartovらは、X (旧 Twitter) で米国の大統領選選挙の投票に関する誤報 (フェイクニュース) を広めるのは誰なのかを調査し、フォロワーが受け取るフェイクニュースの約4分の1を供給する高度にネットワーク化された市民 (‘supersharers’)が存在することを発見した。
誤報の伝播と社会的影響を定量的を捉えるために、創薬過程で必須とされる無作為比較試験を行うことは非現実的である。ワクチンや選挙に関する誤った情報を無作為に人口の半分に割り当て、それによってワクチン接種率や選挙結果が変わるかどうかを調べることは、倫理的にも許されないであろう。
アレンらは、2021年初頭の最初のCOVID-19ワクチン接種が展開される期間中にFacebookで閲覧された約27億件のワクチン関連URLに関する機械学習とソーシャルメディアデータを、対照実験と組み合わせた。誤情報は選択に影響を与えないという主張に反して、Allenらの因果関係推定によれば、ワクチンの誤情報に1回触れるだけで、ワクチンを接種する意向が~1.5ポイント低下した。ここで特に注目すべき点は、誤情報がワクチン接種の意向に及ぼす影響の大きさに対して、最も重要なのは「記事の真実性」ではなく、むしろ「ワクチンが人々の健康に有害との主張」にあったことである。このような、真実だが誤解を招くような内容の主な例として、Chicago Tribune紙の次のような見出しがある: ‘健康な’ “医師がCOVID-19ワクチンを接種した2週間後に死亡。この見出しはフェイスブックで約5500万人に閲覧された。ワクチン接種忌避行動を広い層に促したと想定される。すなわち、見出しにされたこと自体は事実であるが、ワクチン接種と死亡の間に因果関係があることをほのめかしたことが大きな影響を与えたと思われる。
Allenらはまた2021年にFacebook上でCOVID-19ワクチンに関する13,206のURLを取得し、ファクトチェッカーによって誤報と判定されたURLと、判定はされなかったがワクチン接種を躊躇わせたURLとを区別することで、誤報と誤解を招く情報の影響を比較した。総URL閲覧数5億件のうち約98%は、虚偽としてファクトチェックされたコンテンツではなく、誤解を招くコンテンツによるものであり、後者の影響力は前者の46倍に相当し、ワクチン接種の意向を2.8ポイント低下させたと推定した。Facebookのユーザー数が2億3300万人であることを考えると、この種のコンテンツに触れることを防げば、少なくとも300万人以上のアメリカ人がワクチン接種を受けることになっただろう。
Allenらの調査は、誰が誤報の大部分を拡散しているのかについては触れていないが、これは、supersharersが偽情報をソーシャルメディアに氾濫させることで市民の意向を歪めることから、分析しておく必要がある。Baribi-Bartovらは、2020年の米国大統領選挙において、Xで共有された誤情報の80%を拡散した2107人の米国登録有権者 (664,391人の有権者とアクティブなTwitter利用者をマッチさせたパネルの0.3%)をプロファイルし、共和党員(女性)、白人、高齢者(平均年齢58.2歳)である可能性を示した。
この研究からの重要な洞察のひとつは、これらのsupersharersは、通常のユーザーよりも多くのエンゲージメントを受け、ネットワーク影響力の86パーセンタイルにランクされるなど、高いコネクションを持っており、フォロワーが入手できる誤情報の25%近くを供給していた。
Chicago Tribuneの見出しは、質の高い情報源によって発表されたが、Facebook上の反ワクチン団体によって大きくプッシュされた。これらの結果は、COVID-19誤報のsupersharersとしてソーシャルメディア上の52人の米国人医師を特定した他の最近の研究結果 [Psychol Sci, 2020]ともほぼ一致している。Baribi-Bartovらは動機について推測していないが、関連する研究によれば、supersharersは政治評論家、メディア関係者、逆張り (contrarian)主義者、反ワクチン主義者など多様であるが、信頼できないコンテンツを広める個人的、金銭的、政治的動機を持っている。
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