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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] “Accelerated drug-resistant variant discovery with an enhanced, scalable mutagenic base editor platform” Dorighi KM, Zhu A [..] Foster SA, Haley B. Cell Rep 2024-06-04. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.114313 [所属] Genentechグラフィカルアブストラクト

 個別化された癌治療薬は、腫瘍の遺伝的特徴に基づいて各患者に適した治療の選択肢をもたらしたが、腫瘍ゲノムは極めて順応性が高く、遺伝子変異により薬剤耐性を獲得する。しかし、治療を受けている患者集団内で薬剤耐性を促進する変異を同定するには、コスト、資源、時間を要する。

  ジェネンテックの研究チームは今回、抗癌剤耐性を促進する一塩基バリアントや複合バリアントを発見するための、シンプルで高効率なツールセットを開発することを目指した。そのために、B細胞成熟期の体細胞超変異に必要なシチジンデアミナーゼであるAID (activation-induced cytidine deaminase) のドメインをdCas9に融合することで []sgRNAsの標的遺伝子座でC-to-NまたはG-to-Nの塩基変換を誘導するアプローチを取った。

 AID-dCas9融合導入遺伝子とその発現パラメーターの最適化により、類似のシステムと比較して、優れた変異原性(例えば、関心のある遺伝子座内の複数のCまたはG塩基における様々な編集結果をもたらすことが可能) と標的可能なウィンドウ (領域) の拡大を実現した。

 このシステムの機能的な複合バリアントを生成する性能を検証するために、臨床的に関連性のあるが別個のEGFR阻害剤 (エルロチニブおよびオシメルチニブ) に対する耐性をもたらす、EGFRまたはv-rafマウス肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログB1 (BRAF) のコード領域変異の生成に焦点を当てたタイル型sgRNAスクリーニングを行った。

 スクリーニングの結果、エルロチニブおよびオシメルチニブに対する耐性を示す細胞集団で、それぞれ、T790MおよびT790M/L792Fのような既知の変異を同定しただけでなく、BRAFの複雑な多重アミノ酸バリアントを含むいくつかの新規薬剤耐性遺伝子型が発見された。

 新規薬剤耐性遺伝子のいくつかについて、計算モデリングを利用してタンパク質構造への影響を評価した。続いて、細胞株や薬剤の投与量を超えたトランスジェニック・アッセイを利用して、特定のタンパク質ドメインにおける単一対立遺伝子と複合対立遺伝子の表現型への摂動を評価した。

 本研究で開発・実証した条件付きAID-dCas9システムと分析のパイプラインは、新規遺伝子変異発見のためのシンプルでスケーラブルかつ効果的な細胞ベースのプラットフォームである

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