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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Protocol “Molecular recording using DNA Typewriter” Liao H, Choi J, Shendure J. Nat Protoc. 2024-06-06. https://doi.org/10.1038/s41596-024-01003-0 [所属] U Washington (Seattle), , Memorial Sloan Kettering Cancer Center, Brotman Baty Institute for Precision Medicine, Allen Discovery Center for Cell Lineage Tracing, HHMI (Seattle)

[要点]

  • DNAタイプライターは、DNAテープアレイに沿ってユニークなバーコードの物理的順序を追跡することにより、分子事象の時間的順序を記録するCRISPRゲノム編集ベースの手法である。
  • 他の既存の手法と比較して、DNAタイプライターは高度に多重化可能であり、一方向的かつ逐次的であるため、何千もの挿入を正確な順序で捉えることができ、HEK293T、マウス胚性幹細胞、線維芽細胞などの生きた哺乳類細胞で活性を示す。
[アブストラクト]

 ゲノムDNAに分子情報を記録することは、多細胞生物の発生から癌の進化に至るまで、さまざまなテーマを研究するための強力な手段である。ゲノム編集に基づく分子記録では、細胞分裂やシグナル伝達経路の活動などの事象が、細胞のDNAに特定の変化を引き起こし、細胞の履歴に関する情報をゲノムに記録する。しかし、このアプローチでは哺乳類細胞において記録された事象の時間的関係を捉えることは依然として困難であった。DNAタイプライター・システムは、ゲノム編集を利用して、操作されたゲノム領域への連続的な挿入を容易にすることにより、この制限を克服している [原著論文紹介crisp_bio記事参照*]

  • DNAタイプライターには3つの異なる構成要素がある: DNAテープ、プライムエディター (PE)、そしてDNAテープへの挿入編集をプログラムするプライム編集ガイドRNA (pegRNA)である。
  • このプロトコール論文では、DNAタイプライターの一般的な設計上の注意点、HEK293T細胞を用いたDNAタイプライターによる記録実験のステップバイステップの手順、DNAタイプライターのデータを解析するためのスクリプト例について述べる。
  • このプロトコールは、DNAタイプライター2つの主な用途をカバーしている:プライム編集を使用した、プログラムされたバーコード挿入による連続的なトランスフェクションイベントの記録と、単一細胞が多系統に拡大する際の系統情報の記録である。
  • 哺乳動物細胞に適合する他の方法と比較して、DNAタイプライターはより高い記録容量で時間的情報の記録を可能にし、分子クローニング、哺乳動物細胞の培養、DNAシーケンスのデータ解析の基本的な専門知識があれば、46週間で完了することができる。

DNA Typewirter[*] 関連crisp_bio記事


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