[出典] “A suite of enhancer AAVs and transgenic mouse lines for genetic access to cortical cell types” Ben-Simon Y, Hooper M, Narayan S, Daigle T [..] Tasic B. bioRxiv. 2024-06-11 [preprint]. https://doi.org/10.1101/2024.06.10.597244 [所属] Allen Institute for Brain Science, UC Berkeley

 哺乳類の大脳皮質は、形態学的、生理学的、分子学的に異なる性質を持つ細胞で構成されており、それぞれに共有されている性質に従って細胞タイプに分類することができる。大脳皮質によって導かれる計算および認知プロセスに対する各細胞タイプの寄与を定義することは、健康および疾患における大脳皮質の機能を理解する上で不可欠である。

 米国の研究チームは、マウスとヒトのトランスクリプトームとエピゲノムによる大脳皮質の細胞タイプ分類を用いて、マーカー遺伝子とエンハンサーを定義し、大脳皮質細胞タイプの一連の遺伝学的ツールを構築した。

[詳細]

  • マウス成体大脳皮質のsingle-nucleus Multiomeデータセット (snMultiome 10x、各細胞核からのsnRNA-seqsnATAC-seqで構成されるデータセット)を、既存のヒト大脳皮質データセットとともに用いて、これまでに発表されたデータセットと整合するトランスクリプトームとエピゲノムの異種間分類法を作成した。
  • トランスクリプトームとエピゲノムの両分野で細胞タイプを定義し、対応する「タグ」、すなわちマーカー遺伝子と推定エンハンサーを同定して、大脳皮質の細胞タイプに関する一連の大規模なツール群を構築した。
  • 血液脳関門を通過するPHP.eBカプシドを帯びたシュードタイプであり蛍光タンパク質を発現するエンハンサーAAVを眼窩後注射を介して全身投与することにより、数十の新たなトランスジェニック系統と、大脳皮質細胞の全ての主要なサブクラスを網羅する680以上の推定エンハンサーをスクリーニングし、大脳皮質における発現を評価した。
  • 連続2光子トモグラフィー (STPT)を用いて脳全体の標識パターンを評価し、標識された視覚野細胞のscRNA-seqによって細胞タイプ特異性を決定した [出典Fig. 1 B参照]
  • その間に、マーカー遺伝子に基づくトランスジェニック系統は、極めて高い特異性と細胞タイプ標識の完全性を提供するが、最高の有用性と特異性を得るためには、しばしば3重トランスジェニック交配の作製が必要であることを発見した。
  • 一方、エンハンサーAAVはスクリーニングや使用が容易で、リコンビナーゼのような多様なカーゴを発現するように簡単に改変できる。ただし、その使用は力価や送達方法に依存する。

 今回報告されたツールは、ツール構築のスケールの大きなプロセスとともに、哺乳類の大脳皮質と脳機能の理解に向けた多様な実験戦略を可能にする、これまでにないリソースを提供するものである。