[注] ADPKD (Autosomal dominant polycystic kidney disease / 常染色体顕性多発性嚢胞腎)
[出典] “Adenine base editor corrected ADPKD point mutations in hiPSCs and kidney organoids” Wang J, Qiu Y [..] Wu X, Huang J. Adv Biotechnol 2024-06-11. https://doi.org/10.1007/s44307-024-00026-8 [所属] Sun Yat-Sen U, Children’s Hospital of Shanxi and Women Health Center of Shanxi
ADPKDは、主にPKD1遺伝子の変異によって引き起こされ、多数の嚢胞が形成され、最終的には腎不全に至る。しかし、現在のところ、PKD1遺伝子の変異を修正することを目的とした遺伝子治療研究は行われていない。中国の研究チームが今回、ADPKDに関連する2つの変異部位、c.1198(C>T)とc.8311(G>A)を同定し、ABEにより修正できる可能性があることを明らかにした。
異なるABE変異体の補正効率を、HEK293T-PKD1 c.1198 (C > T)およびHEK293T-PKD1 c.8311 (G > A)レポーター細胞株を用いて試験した。次に、ヘテロ接合体患者の末梢血単核球 (PBMC) からiPS細胞 (iPSCmut/WT) を作製し、疾患細胞モデルを開発した。
iPSCsmut/WTは幹細胞の状態では典型的な疾患表現型を示さなかったが、in vitroで腎臓オルガノイドに分化させると、腎臓臓器特異的マーカータンパク質の発現が認められた。フォルスコリンでcAMPシグナルを刺激すると、iPSCmut/WT由来の腎臓オルガノイドでは腎上皮組織が嚢胞状に膨張し、ADPKD患者に見られる嚢胞表現型に似た表現型が見られた。しかし、ABEを補正したiPSCから分化させた腎臓オルガノイドでは、嚢胞性表現型は認められなかった。さらに、腎臓オルガノイドにスプリット型ABEmaxシステムをディアルAAVで送達することで、平均約6.56%の編集効率を達成した [Fig. 5引用右図参照]。
本研究は、ADPKDを標的とするABEによる遺伝子治療の可能性を示した。
コメント