[注] 本記事は’Cas12/13/14バイオセンサー’シリーズを引き継いだ’CISPRDx’の続き

2024-07-20
CRISPR/Cas12aバイオセンサーによる血清サンプルから癌のバイオマーカー検出を実現する新たなプラットフォームを開発
[出典] "Proteome Fishing for CRISPR/Cas12a-Based Orthogonal Multiplex Aptamer Sensing" Li S [..] Liu Y, Tan W. J Am Chem Soc. 2024-07-15. https://doi.org/10.1021/jacs.4c03061 [所属] Hangzhou Institute of Medicine CAS, Hangzhou Institute for Advanced Study, Zhejiang U Technology, Tianjin U, Molecular Science and Biomedicine Laboratory (Hunan U), Institute of Molecular Medicine (Shanghai Jiao Tong U)

 血清からのタンパク質バイオマーカーの検出は、血清の構成が極めてが複雑であるため、非常に困難であったが、中国の研究チームが、その課題を解決するプラットフォームCOMPASS (CRISPR/Cas12a-based orthogonal multiplex aptamer sensing)を開発した。

 COMPASSでは、磁性ナノ粒子-タンパク質コロナ (magnetic nanoparticle-protein corona: MNP-PC) [*]と、多重化アプタマーパネルを、融合し、CRISPR/Cas12aバイオセンサーがアプタマーを介してタンパク質バイオマーカを認識する [グラフィカルアブストラクト参照]

 非小細胞肺癌 (NSCLC) 血清臨床サンプルを用いて、COPASSの性能を実証したが、この過程で、NSCLC診断におけるパネルとして、4 out of nine (FOON)パネル (HE4, NSE, AFP, VEGF165を含む) が最も費用対効果が高く正確であることが明らかになった。

 COMPASSによって、血清タンパク質の多重増幅に伴う問題と、血清中のアプタマー分解の問題を、回避でき、大規模コホート癌スクリーニングのための、簡便で費用対効果が高く、ハイスループットの診断プラットフォームを実現できる可能性が見えてきた。

[*] "Understanding the nanoparticle–protein corona using methods to quantify exchange rates and affinities of proteins for nanoparticles" Cedervall T, Lynch I [..] Dawson KA, Linse S. PNAS 2017-02-13. 

2024-07-19
CRISPR/Cas12aトランス切断を誘発するToehold領域を介したウラシルDNAグリコシラーゼ活性検出法
[出典] "Toehold region triggered CRISPR/Cas12a trans-cleavage for detection of uracil-DNA glycosylase activity" Cui C, Guo G, Chen TH. Biotechnol J. 2024-07-10. https://doi.org/10.1002/biot.202400097 [所属] City U Hong Kong, Hong Kong Centre for Cerebro-cardiovascular Health Engineering, City U Hong Kong Shenzhen Research Institute.

 DNAグリコシラーゼは、DNA分子から損傷した塩基や誤った塩基を認識し除去することにより、遺伝情報の完全性を維持するDNA修復過程において重要な役割を果たす酵素群である。塩基損傷修復経路における重要なDNAグリコシラーゼの一つであるウラシル-DNAグリコシラーゼ (UDG) の発現異常は、多くの疾患と関連している。

 今回中国の研究チームが、toehold領域をCas12a切断活性のアクチベータとして利用するUDG活性検出法を提案した。CRISPR Dx UDG 07-19UDGによって生成されたヘアピンDNAプローブ (HP) 上の領域が、蛍光団とクエンチャーを結合したssDNAのCas12aによるトランス切断を誘導し、蛍光シグナルを発生させる [SCHEME 1引用右図参照]

 このプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)フリーのアプローチは、UDGの検出において0.000368 U/mLという低い検出限界と優れた感度と特異性を達成した。さらに、この方法は阻害剤のスクリーニングや複雑な生物学的サンプル中のUDGの測定に有用である

2024-07-17
血中循環腫瘍細胞の高感度検出のためのマイルド還元活性化CRISPR/Cas12aシステムに基づく電気化学バイオセンサー
[出典] "An electrochemical biosensor based on mild reduction-activated CRISPR/Cas12a system for sensitive detection of circulating tumor cells" Sha L, Cao Y [..] Zhu S, Zhao J, Li G. Biosens Bioelectron. 2024-07-06. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116550

 葉酸受容体は乳癌で過剰発現する細胞表面受容体糖タンパク質の一種である。中国の研究チームが、葉酸受容体陽性CTCを高感度に検出するための電気化学的バイオセンサーを、マイルド還元アシストCRISPR/Casシステムに基づいて設計・作製した。

  • 具体的には、まず、葉酸と細胞表面の葉酸レセプターとの間の強い親和性により、CTCを捕捉する葉酸官能基化磁気ビーズが調製される。
  • 次に、細胞膜をマイルドな還元処理によって、遊離のスルフヒドリル基を多数露出させ、これをマレイミドDNAと結合させ、CRISPR/Cas12aのトランス切断活性が活性化された後、電気活性分子メチレンブルーで修飾された長鎖DNAがランダムに切断され、短いDNA断片となり、グラファイト電極上に捕捉され、CTC数に対応する高度に増幅された電気化学シグナルが生成される。

 この電気化学バイオセンサーは、2細胞/mLという検出限界を達成しただけでなく、その優れた選択性と複雑な環境下での安定性も備えている。

2024-07-15
SHERLOCKにより, 融合遺伝子に駆動される白血病の迅速分子診断を実現
[出典] "CRISPR-based rapid molecular diagnostic tests for fusion-driven leukemias" Vedula RS [..] Lindsley RC. Blood 2024-07-08. https://doi.org/10.1182/blood.2023022908 [所属] Dana-Farber Cancer Institute, Broad Institute, Johns Hopkins U, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Fred Hutchinson Cancer Research Center, McGovern Institute, Harvard Medical School

 本手法では、SHERLOCKを利用して、APL、Ph+ ALL、CMLなどの融合遺伝子同型白血病におけるRNA融合転写産物を検出する。患者サンプルと乾燥血液スポットで検証した結果、これらのアッセイは100%の感度と特異性を示した。最適化により、高度なラボ以外でも使用できるようになり、リソースの少ない環境でも迅速なポイントオブケア診断が利用できるようになった。この技術は、これらの治療可能な癌のタイムリーな診断と治療を促進することにより、転帰を改善することができる。

2024-07-13
POCTの観点からCRISPR Dxバイオセンサーにおけるシグナル読み出し技術をレビュー
[注] POCT (point-of-care testing; 簡易迅速検査, 臨床現場即時検査)
[出典] "Advances and challenges of signal readout systems in CRISPR-based biosensors for point-of-care testing of nucleic acid" Huang D [..] Xu Z, Fang X. Trends Analyt Chem. 2024-07-09. https://doi.org/10.1016/j.trac.2024.117856 [所属] Zhejiang U, Zhejiang U School of Medicine, Boston U;グラフィカルアブストラクト 

 中国を主とする研究チームが今回、ポータブルなシグナル読み出し法の観点から、過去数年間のCRISPR Dxを構成するCRISPR-Casシステムとシグナル読み出し技術の包括的レビューを試みた。

 Cas9、Cas12、Cas13などの一般的なCasヌクレアーゼの構造と特性の簡潔な概要をまとめ、次に、蛍光、電気化学、グルコース、色などのシグナルを読み出すシステムを採用する代表的なCRISPRベースのバイオセンサーを要約する。
  最後に、CRISPR Dxにおけるシグナル読み出し法における現在の課題と将来的な発展の可能性に関する洞察、および有用な検出ツールボックスへの統合の展望について提案する。

2024-07-11
2024-07-11 神経膠腫におけるIDH遺伝子型決定を, MRIに基づく予測とCRISPR/Cas12aに基づく検出を組み合わせることで, 実現

2024-07-06
一塩基ミスマッチCRISPRを用いた一塩基分解能アッセイ用トランジスタ
[出典] "One-Base-Mismatch CRISPR-based Transistors for Single Nucleotide Resolution Assay" Ma H, Tian Y, Kong D [..] Wei D. Biosens Bioelectron. 2024-07-02. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116548 [所属] Fudan U, Shanghai International Travel Healthcare Center

 SNVのアッセイにあたっては、感度と選択性のトレードオフを満足させるために、厳密な増幅条件、複雑な実験装置、専門の人材が必要とされる。復旦大学を主とする研究チームは今回、ウイルスRNA中のSNVを迅速かつ高選択的に検出するためのCRISPRベースのトランジスタ・バイオセンサーを開発した。

 このセンサーでは、CRISPR-Cas13aタンパク質がグラフェンチャンネルの表面で標的SNV RNAを直接捕捉するように、crRNAに合成ミスマッチを導入する。このアプローチにより、トランジスタに高速の電気信号応答が誘導されることから、増幅やレポーター分子を必要としなくなった。

 このバイオセンサーの標的RNAの検出限界は100μL中5コピーと、qPCRに匹敵し、動作範囲は、人工唾液中10〜5×105コピー/mLである。また、15分以内に野生型RNAとSNV RNAを識別可能である。さらに、10μLの口腔咽頭スワブ検体19件から、インフルエンザA, インフルエンザB, およびSARS-CoV-2のバリアントを特異的に検出することに成功した。

 この研究は、CRISPR-トランジスタ技術が、現場に配備可能な核酸スクリーニングや診断のための高精度で高感度なアプローチであることを示した。

2024-07-02
RPA-CRISPR/Cas12a-G4比色アッセイにおいて, 深層学習を介した高精度画像認識・分類を利用することで, 遺伝子組み換え作物の迅速・ポータブル・高感度な検出を実現
[出典] "Rapid, portable, and sensitive detection of CaMV35S by RPA-CRISPR/Cas12a-G4 colorimetric assays with high accuracy deep learning object recognition and classification" Li X, Liu M [..] Hou J, Hou C, Huo D. Talanta. 2024-06-25. https://doi.org/10.1016/j.talanta.2024.126441 [所属] Chongqing U, Chongqing City Management College

 遺伝子組み換えの迅速・高感度・ポータブルな検出は、農業の安全保障と食の安全に貢献する。中国の研究チームが、トランス遺伝子導入に利用されるCaMV35Sプロモーターの高感度、迅速かつポータブルな検出を実現するために、 標題のRPA-CRISPR/Cas12a-G-四重鎖比色アッセイ法を開発した。

 Cas12a-crRNA複合体がRPA増幅産物を認識すると、Cas12aのトランス切断活性を介してG-四重鎖が切断され、G4-ヘミン複合体が過酸化物模倣酵素機能を失い、ABTS2-からABTSへの変換が触媒されなくなり、ひいては、ABTSの吸光度に基づいてCaMV35S濃度を定量可能になる。

 RPA-CRISPR/Cas12a-G4アッセイを利用することで、45分の測定時間でCaMV35SのLoD 10 aMが達成された。深層学習による比色結果の高精度な分類を介して、肉眼よりも正確に微量 (0.01 %) のCaMV35Sを識別する。また、スマホ・アプリとして組み込むことで、ポータブルで迅速な写真識別も実現された。

 こうして、低コスト (0.43ドル)、高精度、インテリジェントなトランスジェニック作物や食品の検査のツールが誕生した。

2024-06-30
DNA基質を介したCRISPR/Cas12aの自己触媒反応をベースとする迅速かつ前増幅不要な核酸検出

[出典] "Rapid and Amplification-free Nucleic Acid Detection with DNA Substrate-Mediated Autocatalysis of CRISPR/Cas12a" Zhou Z [..] Chen G, Xue H, Zhu H. ACS Omega 2024-06-21. https://doi.org/10.1021/acsomega.4c03413 [著者所属] The Seventh Affiliated Hospital of Sun Yat-Sen U, Shantou U,  Fujian Cancer Hospital, Animal Husbandry and Veterinary Institute, U Kentucky, Shantou U,  Guangdong Medical U, Xiamen Fly Gene Biomedical Technology Co Ltd

 標題のDNA substrate-mediated autocatalysis of CRISPR/Cas12a (DSAC)システムは、ループベースのDNA基質をCRISPR/Cas12a複合体に加えることで生じるカスケード増幅効果を利用している。2種類のガイドRNAのうち、一方のcrRNA2はDNA基質上のASFV DNA配列を標的とし、もう一方のcrRNA1はヒトゲノムDNAなどの所望のDNA配列を標的とする [グラフィカルアブストラクト参照]。DSACは、読み出しとして、蛍光ベースおよび紙ベースのラテラルフローストリップを利用可能であり、実証実験では、ブタの血液サンプル中のアフリカ豚熱ウイルス(ASFV)をフェムトモル感度で20分以内に正確に検出することに成功した。

 これまでの増幅を必要としないCRISPR Dxプラットフォームとは対照的に、DSACは、合理的に設計されたDNAオリゴヌクレオチドを加えるだけという、コスト効率が高く、簡便な検出法を提供する。

 注目すべきは、一般的なASFVの塩基配列にコードされたDNA基質が、二重crRNA標的システムを通じてヒト核酸の検出に直接応用できることである。その結果、我々のシングルステップDSACシステムは、高感度、正確かつタイムリーなウイルス感染診断に向けたポイントオブケア診断ツールであり、ヒト疾患検出への応用が可能である。

2024-06-28
Cas12aによる核酸の電気化学的検出法を, レポーターとして銀ナノ粒子標識COFを利用することで改善

[注] COF (covalent organic frameworks / 共有結合性有機フレームワーク)
[出典] "Enhancing CRISPR/Cas-mediated electrochemical detection of nucleic acid using nanoparticle-labeled covalent organic frameworks reporters" Qian H [..] Wang S. Biosens Bioelectron 2024-06-23. https://doi.org/10.1016/j.bios.2024.116522

 中空の球状COF (Hollow spherical COF:  HCOF)は、銀ナノ粒子 (AgNP)-DNAコンジュゲートのナノキャリアとしてシグナル出力を向上させるだけでなく、CRISPR/Cas12aシステムのトランス切断のアクセス性と効率を向上させた。

 標的DNAが存在すると、CRISPR/Cas12aシステムのトランス切断活性が誘発され、HCOF上のAgNPs-DNA結合体が急速に切断され、その結果、電気化学シグナルが顕著に減少する。概念実証実験において、ヒトパピローマウイルス16型 (HPV-16) DNAの高感度かつ選択的な検出を100fMから1nMの範囲で実現し、検出限界は57.2fMに達した。本手法は、crRNAの設計を変更するだけで、HPV-16 DNA以外の標的検出へと展開可能である。

2024-06-26
crisp_bio 2024-06-26 深層学習を利用して, CRISPR/Cas12aベースの診断のためのガイドRNA設計を強化

2024-06-25
HCRによる前増幅とCRISPR/Cas12aにより, 迅速・高効率, 高費用対効果, 高感度なATPセンサーを実現
[出典] "Sensitive aptasensing of ATP based on a PAM site-regulated CRISPR/Cas12a activation" Liang P, Lv B, Chen K, Li D. Mikrochim Acta. 2024-06-13. https://doi.org/10.1007/s00604-024-06477-z [所属] Nanjing Forestry U, Jiangsu Second Normal U

 中国の研究チームが、CRISPR/Cas12aのアクチベーターに二重鎖プロトスペーサー隣接モチーフ (PAM) を分子スイッチとして組み込むことで、CRISPR/Cas12aシグナル増幅因子に組み合わせるHCR (ハイブリダイゼーション連鎖反応) におけるアロステリックプローブ結合 (Allosteric Probe-conjugated PAM site Formation) PAMサイト形成 (APF-CRISPR) を介したATP検出バイオセンサーを構築した [Scheme 1参照]。

 ATP非存在下では、アプタマーを含むプローブ (AP) はステムループ構造をとり、HCRの開始が阻害され、一方で、ATP存在下では、ATP結合によりAPの構造が変化し、その結果HCRトリガー鎖が遊離し、多くのPAM部位を持つ長い二重鎖DNAが生成される。

 二重鎖PAM部位の存在は、CRISPR/Cas12aの切断活性のトリガーとして有力であり、ATP依存でHCR産物に形成されるPAM部位によって、Cas12aのトランス切断活性が誘導されFQ-レポーターが切断され、蛍光シグナルが発生することで、ATP定量が実現する。

 配列要素と検出条件を最適化することで、アッセイの検出限界 (LOD) は推定1.16 nMに、検出のダイナミックレンジは25-750 nMにたっし、アッセイ全体の所要時間は約60分であった。

 さらに、このアプタセンサーの信頼性と実用性が、血清中のATP検出用の市販の化学発光キットと比較することによって実証された。

2024-06-23
Cas12aとCas13aによるインフルエンザウイルスの検出・鑑別
[出典] "CRISPR-Based Assays for Point-of-Need Detection and Subtyping of Influenza" Zhang YB [..] Myhrvold C. J Mol Ding. 2024 Jul;26(7):599-612. https://doi.org/10.1016/j.jmoldx.2024.04.004 [所属] Broad Institute, Harvard-MIT Program in Health Sciences and Technology, Princeton U, Harvard U, Harvard T.H. Chan School of Public Health, HHMI.

 インフルエンザウイルスの多くの種、亜型、亜種を必要な時点で検出するためには、迅速性、感度、特異性を兼ね備え、必要最小限の装置で行える最適化された診断技術が必要とされている。これに応えるために、米国の研究チームが今回、CRISPRベースのRNA検出プラットフォームであるSHINE(Streamlined Highlighting of Infections to Navigate Epidemics)を開発した。

  • 臨床的に関連性のあるインフルエンザウイルス (AおよびB) と亜型 (H1N1およびH3N2) の検出と鑑別のために、4種類のSHINEアッセイを設計・検証した。臨床サンプルでテストしたところ、これらの最適化されたアッセイは、定量的RT-PCRと100%の一致を達成した。
  • 2種類のターゲットの同時検出を実現するCas12aとCas13aを併用するデュプレックスSHINEアッセイも開発し、それによって、抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビルに対する耐性をもたらす変異  (H275Y) の2つの対立遺伝子の識別と、患者サンプル中のインフルエンザAとヒトRNAse Pの同時検出を実現した。

 これらのアッセイは、インフルエンザの診断とサーベイランスを強化するために、臨床検査室以外でのインフルエンザ検出を可能にする。

2024-06-22_2
crisp_bio 2024-06-23 
アクチベーター鎖のコンフォメーション変化を介してCas12aコラテラル活性を直接制御

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CRISPR/Cas9をベースとする大腸菌バイオセンサーによる飲料水中のカドミウム(II)の高感度・特異的検出
[出典] "CRISPR/Cas9-based engineered Escherichia coli biosensor for sensitive and specific detection of Cd(II) in drinking water" Wei Y [..] Jin M. Chemosphere. 2024-06-14. https://doi.org/10.1016/j.chemosphere.2024.142607 [所属] Military Medical Sciences Academy (China);グラフィカルアブストラクト参照

 中国の研究チームが、水中の有害物質カドミウム(II)の高感度かつ特異的な検出を可能にする大腸菌バイオセンサーを開発した。CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を利用して、プロモーターPmer、調節遺伝子merR (m)、ルシフェラーゼ遺伝子luxCDABE を大腸菌染色体にデュアルプロモーターで融合し、安定で環境に優しい全細胞バイオセンサー (whole cell biocensors) K12-PMP-luxCDABE -△cysI を構築した。カドミウム耐性遺伝子cysI のノックアウトは、Cd(II)に対する感度向上に寄与した。

 この大腸菌バイオセンサーは、0.005-2 mg/LのCd(II)に対して良好な非線形応答を示し、検出限界は飲料水中のCd(II)の許容限界に達した。また、Zn(II)、Hg(II)、Pb(II)などの非標的金属イオンの影響を受けずにCd (||)特異的な検出を実現し、さらに、実際の飲料水サンプル中のCd(II)を検出する際には、バックグラウンド干渉を回避して優れた性能を示した。

2024-06-21
[レビュー] CRISPR-Casシステムに基づくバイオセンサーの多重化戦略
[出典] REVIEW "Multiplexed Detection Strategies for Biosensors Based on the CRISPR-Cas System" Wei C, Lei X, Yu S. ACS Synth Biol. 2024-06-11. https://doi.org/10.1021/acssynbio.4c00161 [所属] Zhengzhou U

 核酸検出において、1回の反応で複数の標的核酸を同時に検出することが必要なアプリケーションが増加している。また、CRISPR-Casシステムが、高い特異性、高感度、および、柔軟なプログラム可能性により、核酸の検出に広く利用されている。しかし、CRISPR-Casシステムの多重化にあたっては、非特異的な副次的切断活性、限られたシグナル読み出し戦略、交差反応の可能性を検証・対策する必要がある。本総説では、CRISPR-Casシステムに基づく多重検出の原理、戦略、特徴についてまとめ、さらに課題と展望について述べる [グラフィカルアブストラクト参照]。

2024-06-20
Co-HIT:
複数の同一部位インデルを検出するワンポット超高感度ERA-CRISPRシステム (急性骨髄性白血病関連遺伝子) https://crisp-bio.blog.jp/archives/36037389.html 

2024-06-19
λエキソヌクレアーゼによる選択的消化とCRISPR/Cas12aシグナル増幅に基づくmiRNA-155の検出
[出典] “Detection of MicroRNA-155 Based on Lambda Exonuclease Selective Digestion and CRISPR/Cas12a-assisted Amplification” Zhang H, Xu J, Liu S, Li H, Xu L, Wang S. Anal Chem 2024-06-11. https://doi.org/10.1016/j.ab.2024.115592 [所属] Jiangxi Normal U, Jiangxi Provincial Center for Disease Control and Prevention;

 miRNA-155はヒト癌細胞においてアポトーシスを阻害する最も効率的なマイクロRNAの一つであり、多くの悪性腫瘍において過剰発現している。したがって、miRNA-155遺伝子を高感度で検出することで、癌の早期発見が実現する可能性がある。中国の研究チームは今回、5’リン酸化二本鎖を切断できるλエキソヌクレアーゼを用いて、miRNA-155遺伝子に結合できるヘアピンプローブを作成し、このプローブがCas12a酵素に認識されることで、Cas12aのトランス切断活性が駆動され、強い蛍光を発するに至るmiRNA-155バイオセンサーを作成した [グラフィカルアブストラクト参照]

 このバイオセンサーの蛍光強度は標的濃度の対数と強い直線関係を持ち、検出限界は8.3pMに達した。さらに、このバイオセンサーは、血清サンプル中のmiRNA-155遺伝子の検出において、卓越した特異性、低偽陽性シグナル、高感度を示した。

2024-06-17
分割型アクチベータにヒドラゾンケミストリーを組み合わせたCRISPR/Cas12aバイオセンサーによる黄色ブドウ球菌 (SA)検出
[注] 出典論文ではこのシステムを”dual recognized CRISPR/Cas12a system / 二重認識CRISPR/Cas12aシステム”と称している。
[出典] “Modularization of dual recognized CRISPR/Cas12a system for the detection of Staphylococcus aureus assisted by hydrazone chemistry” Yang J, Zhao Y [..] Zhang J. J Hazard Mater. 2024-06-10. https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2024.134877 [所属] Shanghai U, Shanghai Jiao Tong U

 二重認識CRISPR/Cas12aシステムでは、トランス切断活性を活性化するDNA鎖 (アクチベータ)を2つの部分 (TS1-NHNH2とTS2-CHO)に分割し、正確な二重標的認識を可能にするとともに、アクチベータ全長の形成にヒドラゾンケミストリーを導入した。すなわち、相補的な塩基対形成がもたらす近接効果により、ヒドラゾンケミストリーがアクチベータ全体の形成を促進し、CRISPR/Cas12aシステムの特異性を向上させ、SAの正確な分析に寄与する。

 さらに、SA周辺にCRISPR/Cas12aが一時的に凝集することで、シグナルをさらに増幅し触媒効率を高めた。

 二重認識CRISPR/Cas12aシステムは高感度、安定性、再現性、特異性を有し、複雑な基質中のSAを検出するのに成功した。また、クロロゲン酸やコンゴーレッドの阻害効果の評価についても、フローサイトメトリーと比較して良好な性能を示した。

2024-06-15
アセンブルPCRとCRISPRによる超高感度なリファンピン耐性結核菌アッセイ法
[注] リファンピン=リファンピシン (rifampicin)
[出典] “ACURAT: Advancing tuberculosis detection through assembled PCR & CRISPR for ultra-sensitive Rifampin-resistant analysis testing” Zheng R, Zhang L, Yu C [..] Ye F, Huang X. Chem Eng J 2024-06-11. https://doi.org/10.1016/j.cej.2024.152712 [所属] Wenzhou Medical U, Tongji U, Wenzhou Sixth People’s Hospital, Institute of Physics CAS

 結核は依然として世界的な健康への脅威であり、また、臨床治療戦略が複雑にする薬剤耐性結核菌を迅速かつ正確な診断が必要とされている。WHO’s Global Tuberculosis Report 2022によると、世界中で推定1,060万人が結核を発症し、約41万例が薬剤耐性結核菌感染者であり、推定130万人が死亡した。中国の研究チームが今回、PCRとCRISPR-Cas9をベースとしたAssembled PCR & CRISPR for Ultra-sensitive Rifampin-resistant Analysis Testing (ACURAT)と称する結核菌の革新的な同定および抗生物質感受性検査システムを開発した ACURAT[Fig. 1引用右図参照]。

 ACURATは、ネステッドPCR方式を採用し、わずか10コピーの結核ゲノムを高感度に検出する。さらに重要な点は、薬剤耐性結核菌の変異コドンでは、PAM配列がほとんど全てで欠損していることから、CRISPR-Cas9システムが機能するための必須要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ (PAM) 配列を導入するために設計したプライマーを導入したことである [PAM-PCR; 挿入図右下参照]。さらに、1塩基の一塩基多型(SNPs)を識別するのに、完全一致sgRNAでは限界があることを認識し、sgRNAの3’末端に野生型遺伝子型では1塩基のミスマッチ、薬剤耐性遺伝子型では少なくとも2塩基のミスマッチを特徴とする、有意な選択性を有するmicro-mismatch CRISPR-Cas9システム [挿入図左下参照]を設計した。

 その上で、ACURATのパラメーターを体系的に最適化した結果、19 ntのガイドRNA長、PAM配列との1 bpの距離、HiFi-Cas9の使用が効率を著しく向上させることが明らかになった。

 ACURATはポリメラーゼβサブユニット遺伝子のコドン516、526、531、533において、薬剤耐性に関連する15の遺伝子型を識別することに成功した。ACURATは、効率的な結核診断の臨床的可能性を示し、また、他の配列認識シナリオにも展開可能なことを示した。