[出典] "Folate as a potential treatment for lethal ventricular arrhythmias in TANGO2-deficiency disorder" Xu W [..] Zhang L. JCI Insight. 2024-06-10. https://doi.org/10.1172/jci.insight.171005 [所属] Baylor College of Medicine, Houston Methodist Research Institute, Weill Cornell Medical College;グラフィカルアブストラクト 

 TANGO2欠損症 (TDD) は、TANGO2遺伝子の機能喪失型バリアント (biallelic loss-of-function) によって引き起こされる常染色体潜性遺伝性疾患である。TDDに関連する不整脈は、標準的な抗不整脈薬に対して難治性であり、主要な死亡原因となっている。TDDの疾患モデリングは、主にヒト皮膚線維芽細胞を用いて行われてきたが、最近では複数の研究グループによってショウジョウバエを用いて行われている。しかし、ヒト心筋細胞系は報告されていないことが、TDDに関連する不整脈の研究と理解の大きな妨げとなっていた。著者らは、TDDにおける主要な電気生理学的異常を再現する患者由来iPS細胞から分化させた心筋細胞 (iPSC-CM)モデルを確立した。

 iPSC-CMモデルにおいて、電気生理学的異常を、アデノウイルスによる野生型 (WT)-TANGO2の発現、または、CRISPR-Cas9遺伝子編集を用いた病原性バリアントの修正を介して、回復することが示された。

 TDD患者を経時的に追跡する研究から、マルチビタミン/B複合体の摂取が、TDD患者の心臓クリーゼのリスクを大幅に減少させることが示唆しされている。こうした臨床所見と一致して、高用量の葉酸 (ビタミンB9) がTDD iPSC-CMにおいて不整脈を実質的に消失させること、葉酸の効果がジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤メトトレキサートによって阻害されることが示され、抗不整脈作用を媒介するためには細胞内葉酸が必要であることが支持された。

 TDD iPSC-CMモデルから得られたデータは、臨床的観察結果とともに、TDD患者の心臓クリーゼを緩和するためのビタミンB群の使用を支持し、生命を脅かす事象の際に救命の可能性のある治療戦略を提供するものである。