[出典] "Ablation of the dystrophin Dp71f alternative C-terminal variant increases sarcoma tumour cell aggressiveness" Alnassar N [..] Górecki  DC. Hum Mol Genet. 2024-06-09. https://doi.org/10.1093/hmg/ddae094 [所属] U Portsmouth, Teesside U, U Southampton, Maj Institute of Pharmacology PAS (Poland)

 最も普遍的なジストロフィンのアイソフォームであるDp71の発現の変化は、腫瘍の種類を問わず患者の生存と関連している。興味深いことに、ある種の悪性腫瘍ではDp71は腫瘍抑制因子として働くが、他の悪性腫瘍では発癌性を示す。この多様性は、それぞれ特異的な性質を持つ異なるC末端を持つタンパク質をコードする2つのDp71スプライスバリアント [出典Figure 1参照]の発現によって説明できるが、それぞれのバリアント固有の役割の同定は進んで来なかった。

 英国にポーランドが加わった研究チームは今回、CRISPR/Cas9を用いて、正規のC末端バリアントを発現していない肉腫細胞株において、代替C末端を持つDp71fバリアントをノックアウト (KO)し、KO細胞の分子生物学的 (RNAseq) および機能的特徴解析を行った。

 Dp71fのKOはトランスクリプトーム上の大きな変化を引き起こした。特にカルシウムシグナル伝達経路とECM-受容体相互作用経路に関与する遺伝子の発現に影響を与えた。ゲノムスケールでの代謝解析の結果、膜小胞反応を介したグルコース輸送の大幅なダウンレギュレーションと、解糖/糖新生経路のダウンレギュレーションが確認された。機能的には、これらの分子変化は、カルシウム応答、細胞接着、増殖、血清飢餓下での生存、化学療法抵抗性の増加と対応していた。

 KO細胞では、GLUT1タンパク質の発現が減少し、接着せずに生存し、マトリックスメタロプロテアーゼの放出が増加したにもかかわらず、in vitroおよびin vivoでの遊走および浸潤は変化しなかった。

 今回得られた知見は、ジストロフィン転写産物の選択的スプライシングの重要性を強調し、腫瘍細胞で頻繁に調節不全になる、異なる細胞プロセスを制御していると思われるDp71fバリアントの役割を強調するものであり、この制御機構の欠損が肉腫細胞の生存と治療抵抗性を促進する。従って、Dp71fは、生理学および悪性腫瘍全体における特定のDMD転写産物の複雑な機能を探求する今後の研究のターゲットである。