[注] T細胞の可塑性: T細胞が周囲の環境変化に応じて炎症性あるいは免疫抑制性 (病原性) に変化する性質
[出典] "Targeting T cell plasticity in kidney and gut inflammation by pooled single-cell CRISPR screening" Enk LUB [..] Krebs CF. Sci Immunol. 2024-06-14. https://doi.org/10.1126/sciimmunol.add6774 [所属] U Medical Center Hamburg-Eppendorf, CeMM Research Center for Molecular Medicine of the Austrian Academy of Sciences, Medical U Vienna.

 病原性T細胞の可塑性を調節して免疫寛容原性表現型を促進することは、自己免疫やがんにおける有望な治療アプローチである。今回、ドイツとオーストリアの研究チームが、抗好中球細胞質抗体 (ANCA) 関連糸球体腎炎患者の腎臓におけるTヘルパー17 (TH17)細胞の可塑性を、シングルセル(sc)T細胞受容体解析とscRNA Velocity [*1]に基づいて同定し、そうした治療法開発の手かがりを示した。

 T細胞の極性化と可塑性を駆動する分子を明らかにするために、生体内でのプール型CROP-seq [*2] (in vivo pooled scCRISPR droplet sequencing: iCROP-seq) スクリーニング法を確立し、糸球体腎炎と大腸炎のマウスモデルに適用した。TH17細胞を対象とするiCROP-seqにおいて、遺伝子ターゲティングによる転写摂動を見ることで、遺伝子をランキングし、Tヘルパー1(TH1)と制御性T細胞への分極の偏りを定量することに成功した。

 さらに、iCROP-seqを介して、疾患特異的・組織特異的な方法で遺伝子や経路を効率的に機能的に階層化することで、治療標的の同定を促進することが可能なことが示された。

 iCROP-seqは、数多くの治療薬候補を一回の実験でスクリーニングすることも可能にすることから、自己免疫疾患の分子機構の解明と創薬に有用なツールである。

[*1] RNA Velocityは、イントロン由来のspliced RNAと、エクソン由来のunsplicedなRNAの比率に着目することで、細胞の分化の向きをベクトル場として可視化する技術 [TOGO TV 30. 理解して使うRNA Velocity解析ツール -最近のツールの紹介- @ Bio”Pack”athon2023#2]
[*2] CROP-seqはシングルセル・トランスクリプトームをリード・アウトとするプール型CRISPRスクリーニングの1手法 [CRISPR関連文献メモ_2016/12/19:Perturb-Seq; CRISP-seq; CROP-seq]