[出典] "Nanopores Reveal the Stoichiometry of Single Oligoadenylates Produced by Type III CRISPR-Cas" Naval DF [..] Schmid S. ACS Nano. 2024-06-14. https://doi.org/10.1021/acsnano.3c11769 [所属]  Wageningen U and Research, Delft U Technology, U Basel.

 環状オリゴアデニル酸 (cOA) はタイプ III CRISPR-Casシステムにおいて産生される二次情報伝達分子である。cOAは、下流のエフェクター・タンパク質をアロステリックに活性化し、宿主細胞の休眠や細胞死を誘導する。興味深いことに、タイプIII CRISPR-Casシステムは、サブシステムごとに異なるcOA化学量論(3〜6個のアデニル酸一リン酸を持つ)を利用することが報告されている。しかし、これらのシステムの特性はこれまでバルクでのみ確認することが可能であり、1分子分解能を備えたアッセイは存在しなかった。

 オランダを主とする研究チームは今回、ナノポアによる測定とニューラルネットワークによる推論により、酵素由来のサンプルを含むcOA混合物の化学量論的組成を一分子分解能で定量的に推論することに成功した  [Figure 1引用左下図およびFigure 2引用右下図参照]。
cOA 1  cOA 2
 3~6個のアデノシン一リン酸 (AMP) モノマー(以降、cA3~cA6)からなる既知の単分散化学量論的合成cOAを検出し、このデータをCNNのトレーニングセットとして使用し、既知の多分散組成のcOA混合物に目を向け、CNNが正しい化学量論比を定量する能力を検証した。次に、このラベルフリーcOA同定パイプラインを用いて、酵素cOAサンプルをアッセイした。

 具体的には、異なるタイプIII-AおよびIII-B複合体によって生成されるcOAの化学量論的組成を同定し、それらをCARF活性化能と比較した。液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)により、ナノポアの結果をさらに確認した。最後に、1つの原核生物宿主において、複数のIII型CRISPRシステム(おそらく様々なcOA化学量論が生じる)が進化上有益であると仮定した解析結果の意味について議論した。

 シングルcOA分解能を持つナノポア-CNNワークフローは、他の多くのシグナル伝達分子(真核生物のものを含む)に適応可能であり、ポイント・オブ・ケアに応用可能な携帯型ハンドヘルド機器に統合できる可能性がある。また、ナノポア-CNNワークフローは、CRISPR-Casの今後の代謝研究、さらには、高速、ラベルフリー、定量的な読み出しが重要な研究において、有望なツールとなることが、示された。