[出典] "CRISPR-Cas9 screens reveal common essential miRNAs in human cancer cell lines" Merk DJ [..] Tabatabai G. Genome Med 2024-06-17. https://doi.org/10.1186/s13073-024-01341-4 [所属] Eberhard Karls University Tübingen, Broad Institute of MIT and Harvard, German Consortium for Translational Cancer Research
CRISPR-Cas9システムを用いたゲノムワイドな機能スクリーニングは、癌細胞株全体に共通する腫瘍特異的な遺伝子依存性を明らかにする強力なツールである。しかしながら、現在のCRISPR-Cas9ノックアウトライブラリーは、主にタンパク質をコードする遺伝子を標的としている。このため、機能ゲノミクスに基づくmiRNAの機能研究には限界があった。
ドイツに米国が加わった研究チームは、合計1,769個のヒトmiRNAを標的とする8,107個の異なるsgRNAsからなる新規のCRISPR-Cas9ノックアウトライブラリー 'lentiG-miR'を設計し、そのsgRNAsの組成、予測されるオンターゲットおよびオフターゲットでの活性、およびスクリーニング性能を過去のライブラリーと比較してベンチマークした。
16の異なる腫瘍を代表する合計45のヒト癌細胞株を用いて、ネガティブセレクションスクリーンを行い、miRNAフィットネス遺伝子を同定した。各細胞株におけるフィットネスmiRNAは、教師ありおよび教師なしの分類器を組み合わせてスコア化した。異なるがん細胞株全体に共通する必須miRNAは、90パーセンタイルを目安に決定した。さらに、異なるがん細胞株で選択された共通必須miRNAのノックアウト実験と遺伝子発現プロファイリングによる検証を行なった。
lentiG-miRは、これまで報告されているmiRNAターゲットライブラリーと比較して、高いオンターゲット活性を維持しながら、タンパク質コード遺伝子に対するオフターゲット活性が著しく低く、miRNA遺伝子のカバレッジが高いことが明らかになった。ごく一部のmiRNAはsgRNAを標的とする強固な枯渇を示し、同じmiRNA遺伝子を標的とする冗長なsgRNA間で高いレベルの一貫性が観察された。45のヒト癌細胞株において、少なくとも1つのモデルでフィットネス遺伝子としてスコアされた標的ヒトmiRNAは217 (12%)に過ぎず、ほとんどのmiRNAのフィットネス効果は細胞株の小さなサブセットに限られていた。対照的に、そのフィットネスプロファイルが殆ど全ての細胞株にわたって均質な共通必須miRNA 49種類を同定した。転写プロファイリングにより、多様な癌細胞株において、個々の共通必須miRNAのノックアウトに反応する遺伝子発現の変化が非常に一貫していることも確認された。
本研究は、ヒト癌細胞株におけるmiRNAフィットネス遺伝子のカタログを定義し、ヒト癌におけるmiRNAのさらなる研究の基盤を提供するに至った。
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