1.[研究資源] インスリン分泌異常モデル細胞作出
  • “Generation of a KCNJ11 homozygous knockout human embryonic stem cell line WAe001-A-12 using CRISPR/Cas9” Yuan F et al. Stem Cell Res. 2017 Oct;24:89-93. Available online 30 August 2017. 膵β細胞の細胞膜にはATP感受性カリウムチャネルと電位依存性カルシウムチャネルが存在し、「グルコース流入と代謝>細胞内ATP増加>ATP感受性カリウムチャネル閉口>細胞膜脱分極>電位依存性カルシウムチャネル開口>インスリン分泌」の機序を担っている。
  • 八量体複合体ATP感受性カリウムチャネルのサブユニットの一つであるKir6.2にATPが結合するとATP感受性カリウムチャネルは閉口し、Kir6.2をコードするKCNJ11遺伝子の変異は、インスリン分泌異常を伴う高インスリン症や糖尿病を引き起こす。
  • 今回、ヒトES細胞H1にCRISPR/Cas9を適用し、KCNJ11のコーディング領域62-bpを欠損しつつ多能性を維持し核型も正常なホモ変異体WAe001-A-12を樹立した。
2.[レビュー] 血液疾患CRISPR/Cas9遺伝子治療の最新動向
  • “Comprehensive update on applications of CRISPR/Cas9 for hematological diseases.” Shi H, Jiang M, Wang Z. Int J Clin Exp Med 2017;10(8):11409-11423. Published August 30, 2017.
  • 近年、多様な血液疾患の遺伝的基盤と分子機構の解明が進んできた一方で、支持療法と補足療法といった臨床的介入は極めて限られており最適化もされていない。造血幹細胞移植(HSCT)が一部の血液疾患に対する唯一の療法であるが、ドナーの限定、移植片対宿主病の発生、加えて、多額のコストにより、臨床応用が進んでいない。そこで、移植以外の療法が求められており、遺伝子治療のその候補であった。
  • 今回、CRISPR/Cas9による鎌状赤血球症、βサラセミア、血友病、白血病およびファンコニ貧血の遺伝子治療研究の進展および臨床展開への課題(オフターゲット;安全性と送達法)をレビューし、患者由来iPSCsをin vitro CRISPR遺伝子編集し自家移植する手法やCAR-TとCRISPRの技術融合など将来展望。
3.データ蓄積によって可能になったクラスI CRISPRアレイの詳細解析
  • “On the global CRISPR array behavior in class I systems.” Toms A, Barrangou R. et al. Biol Direct. Published: 29 August 2017.
  • CRISPR-Casシステムの分類とCRISPRアレイとcas遺伝子のデータベースの拡充が進み、CRISPRアレイのサイズと分布を統計的・定量的に解析することが可能になった。
  • CRISPRのサイズとゲノム内のcas遺伝子セットからの距離の間に強い相関があることが見えてきた。
CRISPR locus