[出典] IN DEPTH "Two teams supercharge gene spread in plants" Stokstad E. Science. 2024-06-27. https://doi.org/10.1126/science.adr3311
[*] 引用記事と論文
[*] 引用記事と論文
- 2023-12-11 [レビュー] 持続可能な雑草管理を革新する技術:遺伝子ドライブとCRISPR-Cas9.
- CRISPRメモ_2019/02/22 [第3項] 合成利己的遺伝要素, CleaveR (Cleave and Rescue: ClvR), による遺伝子ドライブ.
- 2019-12-09 CRISPR TA(toxin-antidote)遺伝子ドライブ法の拡充
- "Cleave and Rescue gamete killers create conditions for gene drive in plants" Oberhofer G, Johnson ML, Ivy T, Antoshechkin I, Hay BA. Nat Plants 2024-06-17. [所属] California Institute of Technology"
- Overriding Mendelian inheritance in Arabidopsis with a CRISPR toxin–antidote gene drive that impairs pollen germination" Liu Y, Jiao B, Chamber J, Qian W. Nat Plants. 2024-06-17. [所属] Institute of Genetics and Developmental Biology CAS, U CAS, Peking U
CALTECHのBruce A. Hayらの研究チームは2019年にCleaveRと称する遺伝子ドライブ法を開発し、ショウジョウバエで実証していたが [*2]、今回、それを、Arabidopsis thaliana に適用することに成功し、2024年6月17日にNature Plant 誌から発表した[*3]。CleaveRは、天然に存在する毒素-抗毒素システム (toxin-antidote: TA) [*4]にヒントを得て開発されたが、中国科学院遺伝与発育生物学研究所の研究チームも同様の手法でArabidopsis thalianaを対象とする遺伝子ドライブを実現したことを同日同誌にて発表した [*5]。これらは、初の植物遺伝子ドライブの実施例である。
CALTECのTA準拠CRISPR遺伝子ドライブであるCleaveRは2つのコンポーネントから構成されている。一つ目は、毒素に相当する「生殖細胞で発現するCas9とガイドRNA (gRNA)」で、ゲノムの別の場所にある必須遺伝子を切断して破壊する機能を担っている。もう一つは、抗毒素に相当する「Cas9-gRNAによる切断に耐性のある必須遺伝子のバージョン (レスキュー遺伝子)」で、必須遺伝子の機能を提供する。CleaveRは、CleaveRを欠く子孫は必須遺伝子の機能的コピーを持たないために死ぬという状況を作り出すことによって広がるが、一方、CleaveRを受け継いだ子孫は生き残り、結果的に、集団内でのCleaveRの頻度が増加していくことになる。
CALTECの研究チームは、植物細胞がタンパク質や脂質を適切に処理するための必須遺伝子YKT61を切断して無効化するシステムを開発した。この遺伝子ドライブにおけるレスキュー遺伝子は、シロイヌナズナの近縁種から採取したYKT61のバージョンであり、Cas9-gRNAが標的として認識しない程度には配列が異なっている。Cas9-gRNAにプロモーターを付加することで配偶子において遺伝子ドライブをオンにするが、遺伝子ドライブの拡散を把握するために、赤色を発現するマーカー遺伝子を導入しておくことで、97%から99%のシロイヌナズナが赤い種子を作り、5世代にわたって持続することを確認した。
中国の研究チームが開発したTA準拠CRISPR遺伝子ドライブTA準拠CRISPR遺伝子ドライブCAIN( CRISPR-Assisted Inheritance utilizing NPG1 (No Pollen Germination 1 ))[*5] は、ガイドRNA-Cas9カセットが必須遺伝子である花粉発芽阻害遺伝子1(NPG1)を標的とし、毒素として花粉発芽を阻害する。再コード化されたCRISPR耐性NPG1コピーが解毒剤として機能し、ドライブを持つ花粉細胞でのみが救済される。意図しない放出による潜在的な影響を制限するため、モデルとして自家受粉するシロイヌナズナを使用した。この遺伝子導入は、2世代にわたって88~99%という高い伝達率を示し、遺伝子導入の拡散を阻害する可能性の低い最小限の抵抗性対立遺伝子しか生み出さなかった。研究チームはCAINを、他家受粉植物集団の迅速な遺伝子改変または抑制のための強力な基盤を提供するものとしている。なお、CAINも、CALTECと同様に、赤色を発現するマーカー遺伝子を導入して、遺伝子ドライブの効果を赤い種子で判定している。
CALTECと中国科学院遺伝与発育生物学研究所の両チームのモデリングによれば、遺伝子ドライブは10~30世代で自然の植物集団に浸透する可能性があり、複数の除草剤に耐性を帯びた雑草の新たな防除法が示唆された。また、雑草根絶を〜10年待つことは実用出来はないと思われるが、CALTECのHayは、農家が毎年、遺伝子ドライブを持つ雑草を畑の周りに植え、少しずつ雑草の数をゼロにしていくことを想定している。
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