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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] 
  • 論文 "Brainwide silencing of prion protein by AAV-mediated delivery of an engineered compact epigenetic editor" Neumann EN, Bertozzi TM [..] Vallabh SM, Weissman JS. Science. 2024-06-28. https://doi.org/10.1126/science.ado7082 [所属] Whitehead Institute for Biomedical Research, MIT, HHMI, Broad Institute of MIT and Harvard, Boston U, Harvard U, Massachusetts General Hospital
  • Perspective "An epigenetic editor to silence genes" Whittaker MN, Musunuru K. Science 2024-06-28. https://doi.org/10.1126/science.adq3334 [所属] Perelman School of Medicine (UPenn).
 プリオン病は深刻な神経変性疾患であり、致死性であるが、神経細胞からプリオンタンパク質を除去することでその進行を防ぐことができる。米国の研究チームが今回報告するCHARMは、プリオンタンパク質 (Prnp )のプロモーターを標的として、Pmp 遺伝子のメチル化そしてサイレンシングを実現する。

 CHARMは、DNA結合ドメイン (DBD)とDnmt3lドメイン (D3L) およびヒストンH3テールで構成され、
[論文のグラフィカルアブストラクトまたはPerspective記事の挿入図参照]、D3Lによる内因性メチル化酵素DNMT3AのリクルートとH3テールによるDNMT3Aの活性化を経て、シトシンとグアニンのジヌクレオチド (CpG) アイランド (CGI) のメチル化を介してPrnp をサイレンシングする。CHARMを送達する事でマウスの脳全体でのPrnp  サイレンシングを実現した。加えて、CHARMは、標的をサイレンシング後、その活性を停止する自己サイレンシング機能を組み込むことができ、長期間の発現がもたらすリスクを回避できる。CHARMは、不要なタンパク質の毒性蓄積によって引き起こされる、プリオン病以外のさまざまな疾患にも応用可能な治療法である。

[詳細]

 プリオン病は、脳内のプリオンタンパク質のミスフォールディングによって引き起こされる致死的な神経変性疾患である。この疾患は、自然に発症することも、遺伝的に受け継がれることも、感染によって後天的に発症することもある(狂牛病など)。現在のところ有効な治療法はないが、脳内のプリオンタンパク質濃度を低下させることで、動物モデルにおいて副作用を最小限に抑えつつ病気の進行を止めることが示されている。加えて、プリオンタンパク質は哺乳類では非必須タンパク質であり、脳内での発現を低下させることが有効な治療戦略であることを示している。

 CRISPR遺伝子治療薬は大きな可能性を秘めているが、臨床への応用はしばしば困難である。しばしば複雑でサイズの大きな分子になることから生体内への送達が困難であり、また望ましくないゲノム編集がもたらされるリスクを伴うからである。著者らは今回、ゲノム配列を改変することなく、DNAメチル化を介して、プリトンタンパク質の長期的な転写抑制を達成するエピゲノム・エディターの開発を試みた。

 既存のエピゲノム・エディターは、細胞毒性を伴うことがあり、また、中枢神経系へ送達する手段であるアデノ随伴ウイルス (AAV) ベクターに組み込むには大きすぎることから、コンパクトで酵素を必要としないエピゲノム・エディターCHARMを設計した。CHARMは、細胞内に発現している内因性DNAメチル化酵素をリクルートすることから、外部からの酵素送達を回避し、また、細胞毒性のある触媒ドメインの過剰発現を回避する。

 CHARMはまた、KRAB転写抑制ドメインとは独立して作用することができることから、CRISPR-Cas、TALE、ZFタンパク質など複数のDNA結合様式に適合する。コンパクトなZFタンパク質を選択すると、1つのAAVに最大3つのDNA標的化エレメントを入れることができ、さらに細胞型特異性を付与するための制御エレメントを入れる余地もある。

 CHARMをプリオンタンパク質を標的とするZFドメインと結合させて、AAVを通してマウスの脳に投与することで、プリオン遺伝子のプロモーターがメチル化され、神経細胞プリオンタンパク質を脳全体で最大80%減少した。さらに、自律的に不活性化する自己サイレンシングCHARMを開発し、CHARMの発現を一時的に制限し、非分裂ニューロンでの慢性発現がもたらす潜在的な抗原性と標的外遺伝子に対する活性を回避した。

 CHARMは、AAVを介したエピゲノム・エディターの送達を初めて実証したものであり、そのコンパクトなサイズは、モジュラー自己サイレンシングを可能にし、多重ターゲティングを容易にし、脂質ナノ粒子のような他のデリバリー様式との適合性が高い。ヒトへの展開についてはさらなる検証が必要であるが、CHARMのようなエピゲノム・エディターは、最終的には、塩基編集やプライム編集のような革新をもたらす可能性がある。
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