2024-07-14 論文著者等による解説記事"CRISPRdelightが生きた細胞内の非反復ゲノム遺伝子座を照らし出す"を以下に引用し、初稿のテキストを一部改訂
[出典] 
Research Briefing "CRISPRdelight illuminates non-repetitive genomic loci in living cells" Yang LZ, Chen LL. Nat Methods 2024-07-05. https://doi.org/10.1038/s41592-024-02352-0

2024-07-10 Nat Methods 論文に準拠した初稿
[出典] "CRISPR-array-mediated imaging of non-repetitive and multiplex genomic loci in living cells" Yang LZ, Min YH, Liu YX [..] Chen LL. Nat Methods 2024-07-04.
https://doi.org/10.1038/s41592-024-02333-3 [所属は記事文末に]

 真核生物の遺伝子発現は、DNAの空間的組織化と動的相互作用によって厳密に制御されている。FISH法によって、固定された細胞内で標的DNA遺伝子座を直接可視化することができるが、DNAの動態を捉えることはできない。

 ライブセルDNAイメージングでは、蛍光タンパク質 (FP)で標識した特異的DNA結合タンパク質を利用されてきたが、近年、後者として触媒活性を失活させたCas9 (dCas9)とsgRNAの系が、特に、ゲノム上の反復配列の検出に活用されている。dCas9-sgRNAの系は非反復DNAの検出にも利用可能ではあるが、有効なシグナルを得るために少なくとも26個のsgRNAsを必要とする。確かに、局所的なシグナル増幅を介して、遺伝子座につき単一のsgRNAを利用するだけで、非反復DNAイメージングを容易にすることができるが
、このアプローチでは、ターゲット外のsgRNAやオフターゲットのシグナル増幅が起こりうるリスクを伴う。

 中国を主とする研究チームは今回、DNAターゲティング能力に加えて、多重なCRISPRアレイを個々のCRISPRアレイへとプロセッシングする能力によって、多重遺伝子編集に活用されてきたCRISPR-dCas12aに注目し、CRISPR-Cas12aをベースとする非反復DNAイメージング法を開発し、CRISPRdelightとして発表した。

 研究チームはまず、さまざまなエンドヌクレアーゼ欠損LbCas12a変異体 (dLbCas12a) に蛍光タンパク質 (FP) を融合し、さまざまなプロモーターを用いて、細胞内で長いCRISPRアレイを発現させる能力をスクリーニングした。その結果、4重変異 (D156R、D235R、D292R、D350R)を帯びたhyperdLbCas12aが最も高性能であり、CAG DNAポリメラーゼIIプロモーターがCRISPRアレイの発現に最適であることを、特定した。

 続いて、dLbCas12a-FPに非反復DNA領域をターゲットとする約36-48個のgRNAを含むCRISPRアレイを設計し (上限 50 gRNAs)、HeLa、U2OS、HCT116、R1胚性幹細胞などの複数の細胞株において、染色体を横断する様々な非反復遺伝子座のイメージングに成功し、この可視化システムをCRISPRdelightと命名した。

 CRISPRdelightによって、異なる核内ドメインにおける遺伝子対立遺伝子の転写を追跡することが可能になり、細胞内位置が転写の不均一性を引き起こすことが明らかになった。例えば、HeLa細胞におけるCCAT1 遺伝子座 (chr8q24) の動きを追跡したところ、核内ラミナに近い遺伝子座は、核内部の遺伝子座に比べて動きが遅く、発現が低下していた。イントロンを持つHSP 遺伝子と持たないHSP遺伝子 (chr13q12) を追跡し、イントロンを持つ遺伝子は、熱ショックやヒ酸処理などの細胞ストレスに応答して、しばしば活発な遺伝子転写が起こる核スペックルと呼ばれる核内構造体に移動し、その結果、転写が増大することが示された。これらの発見は、非反復性DNAを追跡するCRISPRdelightの頑健性と、単一細胞におけるゲノム動態と遺伝子転写を解析する能力を立証するものであった。

 さらに、CRISPRdelightにRNAアプタマーを結合したcrRNAアレイを組み合わせることで、単一のアレイで4種類のサテライトDNA遺伝子座の多重イメージングを実現し、核小体関連ドメインに空間的に近接していることが明らかになった。

 
CRISPRdelightは、FPを他のエフェクターに置き換えることで、転写の活性化や抑制、エピゲノム修飾、大きな遺伝子断片の欠失といった遺伝子操作を行うことができる。

[図一覧]
[関連crisp_bio記事と論文] 
[著者所属機関] Shanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology CAS, Shanghai Institute of Nutrition and Health, Tsinghua-Peking Center for Life Sciences, Fudan U, Hangzhou Institute for Advanced Study, U CAS, New Cornerstone Science Laboratory (Shenzhen), Janelia Research Campus (HHMI)