[出典] "A CRISPR/Cas9 screen in embryonic stem cells reveals that Mdm2 regulates totipotency exit" Gao C, Gao X, Gao F, Du X, Wu S. Communication Biol. 2024-07-03. https://doi.org/10.1038/s42003-024-06507-9 [所属]  China Agricultural U, Institute of Animal Science, Sanya Institute of China Agricultural U

 初期胚発生において、全能性から多能性への移行は、適切な発生にとって基本的かつ重要なプロセスである。しかし、この移行を支配する制御機構は、いまだ解明されていない。中国の研究チームが今回、マウスES細胞 (mESC) における2細胞様細胞 (2CLC) [*] の表現型を調べるために、ゲノムワイドなCRISPR/Cas9スクリーニングを行った。この研究により、2CLCへの移行における細胞運命の決定に重要な役割を果たす10個の制御因子が同定された。
[*] 2細胞様細胞とは,ES細胞の培養において1%以下の割合で存在する,2細胞期胚に特異的に発現するMERVLというレトロトランスポゾンを発現する細胞である [ライフサイエンス新着論文レビュー, 2015]

 注目すべきは、Mdm2 が2CLCの重要な負の制御因子であることで、Mdm2 の摂動によって細胞集団に占める2CLCの割合が高くなった。Mdm2 は、細胞周期の進行とH3K27me3エピジェネティック修飾への影響を通して、細胞の運命に影響を与えていることが示唆された

 今回のCRISPR/Cas9スクリーニングの結果は、様々なレベルで 全能性と多能性を制御する明確な機能を持ついくつかの遺伝子を発見し、今後の分子生物学的研究における潜在的標的の貴重なリソースを提供した。

[図一覧]