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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2025-04-11 Research Highligt記事の書誌情報などを追記
[出典] Research Highlight "CRISPR–Csm guided RNA imaging
Tang L. Nat Methods 2025-04-09. https://doi.org/10.1038/s41592-025-02672-9
  • smLiveFISHは、細胞あたり10~100個を超える転写産物の発現レベルを持つ様々な細胞株において、NOTCH2およびMAP1Bの可視化を実現したが、細胞あたり10コピー未満の標的の場合、検出効率を向上させるためにさらなる最適化が必要になる。
  • 堅牢なマルチプレックスRNAイメージングは、互いに直交するCRISPRシステムを組み合わせることで実現可能であるが、同等のレベルの高効率な直交型CRISPRエフェクターの特定、ガイドRNAの設計によるマルチプレックス戦略の最適化、などが必要であれる。
  • いずれにしても、マルチプレックスイメージング、長期追跡、組織イメージングの継続的な開発は、多様な生物学的文脈におけるRNA生物学への理解を深める大きな可能性を秘めている。
2024-07-18 bioRxiv 投稿に準拠した初稿
[出典] "
Single-molecule live-cell RNA imaging with CRISPR-Csm" Xia C, Colognori D [..] Doudna JA. bioRxiv 2024-07-16 (preprint)Nat Biotechnol 2025-02-18. https://doi.org/10.1038/s41587-024-02540-5 [所属] UC Berkeley (QB3, Innovative Genomics Institute, Department of Molecular and Cell Biology, Department of Chemistry, HHMI)

 RNAの高分解能リアルタイムイメージングは、単一細胞における個々のRNA分子の多様で動的な挙動を理解するために不可欠である。しかし、生きた細胞内での修飾されていない内在性RNAの1分子イメージングは、まだ実現されていない。今回、Jennifer Doudnaが率いる研究チームが、S. thermophilus 由来のRNAを標的とするタイプIII-A CRISPR-Csm複合体と多重化ガイドRNA s(crRNAs)を組み合わせて [*]、初代細胞を含む様々な細胞種におけるRNA一分子の効率的で直接的な可視化を可能にするsmLiveFISH (single-molecule live-cell fluorescence in situ hybridization)を実現した。

 生きた細胞内における細胞表面受容体の一種であるNOTCH2 および微小管結合タンパク質の一種であるMAP1B のmRNA転写産物の振る舞いをそれぞれ追跡し、2つの異なる局在化メカニズムを同定した。すなわち、NOTCH2 mRNAの場合は、小胞体 (ER)に繋留されて核周囲にて新生ペプチドが伸長されつつタンパク質がトランスロケーションし (co-translational translocation) [Fig. 2引用左下図 g 参照]、それと対照的に、MAP1B mRNAの場合は、翻訳と共役せずに細胞周縁部へと向かって輸送される [Fig. 3引用右下図参照]。
Fig. 2   Fig. 3
 smLiveFISHには、健常および疾患におけるネイティブ転写産物の時空間的構成を支配する原理の解明に貢献するポテンシャルがある。

[*] Fig. 1引用右図参照
Single-molecule live-cell RNA imaging Fig. 1 dCsmおよびCRISPRアレイのプラスミドをトランスフェクションすると、細胞はプレcrRNAアレイとともにCsm1、Csm2、dCsm3-2xGFP、Csm4、Csm5、およびCas6タンパク質を産生する。Cas6はプレcrRNAアレイから個々のcrRNAを生成し、Csmタンパク質とのRNPを形成する。それぞれのcrRNAスペーサーを持つRNPは、塩基対の相補性を介して標的RNA分子と同時に結合し、1分子分解能でのRNA検出を可能にする。
 なお、Csmは、XIST 標識予備実験において、RNAを標的とするCsm、PspCas13b、およびRfxCas13dの3種類のエフェクターを比較した結果、dCsmが唯一安定した結果を残したことから選択されたが、Csmは、crRNAとの複合体形成時にdCsm3を介してGFPの多重な結合 (≧ 3)を実現すること [右図 aの下段参照]、さらに、RNAヘの結合親和性が強い、という特長も備えている。
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