[注] PNAs (peptide nucleic acids)
[出典] "Peptide Nucleic Acid-Mediated Regulation of CRISPR-Cas9 Specificity" Carufe KEW, Economos NG, Glazer PM. Nucleic Acid Ther. 2024-07-22. https://doi.org/10.1089/nat.2024.0007 [所属] Yale School of Medicine, Brigham and Women's Hospital

 CRISPR-Cas9遺伝子治療は、多くの疾患に対する強力なツールであることが証明されてきたが、臨床応用に向けては、さらにその精度を高める必要がある。オフターゲット部位でのCas9切断は、以前とし課題であり、また、常染色体顕性疾患の治療も、変異対立遺伝子が野生型配列とたった1塩基対しか違わない場合には、依然として難題である。

 米国の研究チームが今回、ガイドRNA (gRNA) 中の選択されたスペーサー配列に結合する合成ペプチド核酸(PNA)を利用して、Cas9の標的への特異度を10倍まで高めることに成功した。PNAの長さ、結合位置、gRNAとの相同性の度合いのバリエーションを比較した結果、プロトスペーサー隣接モチーフ (PAM) 部位から遠位の領域に結合したPNAは、オンターゲット/オフターゲットおよび対立遺伝子特異的シナリオの両方において特異性を効果的に高めることが明らかになった。さらに、gRNAのPAM近位領域に結合したPNA間に意図的なミスマッチを導入することで、対立遺伝子特異的な方法でCas9活性を調節できることを実証した。

 PNAの利用は、CRISPR-Cas9遺伝子治療技術の課題を解決し、その可能性を拡大するに有望な亜プローチである。