[出典] "CDC7 inhibition impairs neuroendocrine transformation in lung and prostate tumors through MYC degradation" Quintanal-Villalonga A [..] Rudin CM. Sig Transduct Target Ther. 2024-07-26. https://doi.org/10.1038/s41392-024-01908-y [所属] Memorial Sloan Kettering Cancer Center (MSCC), Columbia U, Weill Cornell Medicine, Fred Hutchinson Cancer Center, UW Seattle, Institute of Biomedicine of Seville
神経内分泌 (NE) 癌への形質転換は、肺癌や前立腺癌における標的治療抵抗性の機序であり、予後不良につながる。現在までのところ、腫瘍中の腫瘍蛋白P53(TP53 ) および網膜芽細胞腫転写コアプレッサー1 (RB1 ) 変異の発現により、形質転換のリスクが高い患者を同定可能であるが、組織学的形質転換を予防または遅延させる治療戦略は存在しない。
MSCCを主とする研究チームは今回、神経経内分泌癌への形質転換を受けた腫瘍の潜在的な治療上の脆弱性を同定するために、先行研究論文 [Sci Transl Med, 2023]で記載されていたEGFR変異型SCLC (T-SCLC) PDX (SCLC-Nサブタイプ) 由来の短期in vitro培養細胞株を用いて、15回の集団倍加(21日間)にわたるCRISPR-Cas9ドロップアウトスクリーニングを行った [Fig.1 a/b 引用右図参照]。
スクリーニングにあたっては、臨床開発中の既知の薬理学的阻害剤または米国医FDA承認薬の標的をコードする~2,300の遺伝子を標的とする~14,000のsgRNAからなるライブラリーを活用した。最終タイムポイントと0日目のsgRNA量を比較するディープシーケンス解析により、スクリーニングで枯渇したトップヒットの中にCDC7を標的とする複数のsgRNAが同定された [挿入図 b参照]。
腫瘍におけるCDC7遺伝子のアップレギュレーションは、TP53/RB1 の共活性化後、NE形質転換の初期段階においてすでに起こっており、CDC7阻害剤シムロセルチブ (simurosertib) に対する感受性を誘導する。
CDC7の阻害は、幹細胞性と組織学的形質転換に関与するMYCプロトオンコジーン (MYC) のプロテアソーム媒介分解を誘導することにより、NE形質転換のin vivoモデルにおいて、NEのトランス分化を抑制し、標的治療に対する奏効を延長させた。
分解抵抗性MYCアイソフォームの異所性過剰発現は、シムロセルチブ存在下でも、標的治療で観察されたNE形質転換表現型を再確立した。
CDC7阻害はまた、肺および前立腺の小細胞癌モデルにおいて、標準的な細胞毒性薬 (シスプラチン、イリノテカン) に対する反応を著しく延長した。
これらの結果から、CDC7阻害は、腫瘍細胞の分化の可塑性 (lineage plasticity) を抑制する治療戦略であると同時に、新生あるいは形質転換後のNE腫瘍を効果的に治療する戦略であると考えられる。シムロセルチブの臨床有効性試験が進行中であるが、この戦略は形質転換リスクのある患者にも容易に適用できる可能性がある。
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