[出典] "Therapeutic strategy for spina l muscular atrophy by combining gene supplementation and genome editing" Hatanaka F [..] Izpisua Belmonte JC. Nat Commun. 2024-07-24. https://doi.org/10.1038/s41467-024-50095-5 [所属] Salk Institute for Biological Studies, Altos Labs Inc, U Catolica (Spain), 阪大, 兵庫医科大.
SMN1 遺伝子の欠損は脊髄性筋萎縮症 (SMA) の原因となり、運動ニューロンの喪失、筋力低下、萎縮を示す。低分子化合物やウイルスベクターを含む現在の治療戦略は、運動機能と生存率の改善において有望であるが、SMAの内因性変異と表現型を確定的かつ長期的に改善することは、依然として非常に困難である。
近年、CRISPR-Cas9技術とその派生技術 (BEやPE) によるゲノム医療の研究が進められている。SMNの治療戦略としても、BEを介したSMN2 の発現亢進の有効性を示された。しかしながら、この戦略は、特に内因性SMN2 のコピー数が少ないことを特徴とする重症SMA症例において、有効であるとは限らない。
一方で、SMN1 変異のin situ遺伝子修正が、すべてのSMA患者に恒久的な治癒をもたらす可能性を秘めている。しかし、CRISPR/Cas9 HDR経路を介したゲノム編集は、非分裂細胞、特に運動ニューロンにおけるの効率の悪さが、障害になっている。さらに、ゲノム編集ツールの脊髄へのin vivoでの送達も、障害になっている。
Izpisua Belmonteらの研究チームは、CRISPR-Cas9をベースとした相同性非依存的標的統合 (Homology-Independent Targeted Integration: HITI) 戦略を開発し、in vivoで分裂している細胞でも分裂していない細胞でも一方向の効率的なDNAノックインを可能にした [Fig. 2引用右図参照]。
研究チームは今回、マウスのSMA突然変異を修正することにより、HITI法の有用性を実証した。さらに、Smn1 cDNAの補充と組み合わせると、SMAマウスに長期的な治療効果を示した [Fig. 1引用左図参照]。
2つの手法を組み合わせる今回の戦略"Gene-DUET"は、遺伝性疾患の長期的かつ効率的な治療に新たな道をもたらすかもしれない。
[HITI法紹介crisp_bio記事]
- 2017-05-06 HITI: 非相同末端結合(NHEJ)によって、in vivo で非分裂細胞に外来遺伝子をノックイン;“In vivo genome editing via CRISPR/Cas9 mediated homology-independent targeted integration” Suzuki K, Tsunekawa Y, Hernandez-benitez R, Wu J [..] Izpisua belmonte JC. Nature 2016-11-16/12-01.
[塩基編集によるSMA治療戦略紹介crisp_bio記事]
- 2023-09-28更新 塩基編集とヌシネルセンの併用による脊髄性筋萎縮症(SMA)の単回治療の可能性 (マウスモデル)
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