[出典] "Pulmonary and renal long COVID at two-year revisit" Wang J, Liang X, Zheng Y, Zhu Y [..] Chen H, Li J, Xu J, Guo T, Shen B. iScience. 2024-06-21 (2023年3月8日投稿). https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.110344 [所属は文末に]
2022年3月19日現在、世界中で4億6,000万人以上がCOVID-19に罹患しており、その98.5%以上が治癒している。しかし、回復した患者の約70%が罹患6ヵ月後にCOVID後遺症を経験しており、世界的な関心事となっている。
COVID後遺症は、ほぼすべての臓器に影響を及ぼし、最も多く報告されている症状には、胸痛、呼吸困難、疲労、嗅覚または味覚障害、および脳霧、記憶障害、不安または錯乱、認知障害などの神経認知作用が含まれる。これらの症状は、COVID-19の流行中または流行後に出現し、数ヵ月間持続した。
ある研究 [Lancet Respr Med, 2021]では、退院後12ヵ月まで肺の病変が長期間持続していたことが報告されており、登録患者の24%(N=20)が、主にすりガラス状影 (gound glass opacity: GGO) 病変の形で、未解決のX線学的変化を示していた。腎の病変は退院後6ヵ月まで報告されており [Lancet, 2021]、症例の35%(N=487) に腎機能を洗わす推算糸球体濾過量 (estimated Glomerular Filtration Rate: eGFR)に異常があり、22%は発症以来持続する腎機能障害を示していた。とはいえ、モニタリングの期間が限られているため、これらの症状の長期的な影響は不明であった。また、肺および腎のCOVID後遺症の根底にある分子機序は依然として不明であり、肺および腎のCOVID後遺症の予防・治療は依然として困難である。
中国の研究チームは今回、過去に中国での最初のパンデミック時に登録されたCOVID-19患者144人のコホートからのデータをベースにした機械学習により、肺および腎にみられるCOVID後遺症の予測モデルを開発した。これらのデータには、最先端の質量分析 (MS) をベースとするプロテオミクスとメタボロミクス、臨床パラメータ、胸部コンピュータ断層撮影 (CT) スキャン画像のデータが含まれている。
144名は、発症したから4〜10日 (中央値 6日)温州医科大学附属第一医院https://en.wikipedia.org/wiki/The_First_Affiliated_Hospital_of_Wenzhou_Medical_University に入院し、20-36日 (中央値26日) で退院し、一年後と二年後にそれぞれ73名と57名を再診することができた。
- CT画像において線維状ストライプ (Fibrous stripe) [Figure 5引用右図参照]を特徴とする肺のCOVID後遺症が、1年後および2年後の再診でそれぞれ8.7%および17.8%の患者に観察され、腎ではそれぞれ15.2%および23.9%の患者に認められた [結果全体については、グラフィカルアブストラクトから引用した右下図参照]。
- COVID-19発症1ヵ月目に収集された臨床データとマルチオミクスデータをベースに構築した機械学習モデルの予測精度は87.5%に達し、COVID-19急性期のデータから肺と腎におけるCOVID後遺症を予測可能なことを示された。
- プロテオミクスからは、肺でのCOVID後遺症は、肺線維状ストライプは血清中の肺サーファクタントタンパク質B (SFTPB) の発現低下とATRタンパク質の発現亢進と関連し、腎のCOVID後遺症は尿タンパクの質の持続的抑制と関連することが明らかになった。
- 興味深いことに、肝臓の機能は2年後に1年後からの回復が見られた。しかし、COVID-19患者に見られる肝障害とCOVID-19感染以前からの肝障害の関係性が十分には明らかになっていないことから [COVID-19 and the liver, 2020]、ここでは分子機序を探るまでには至らなかった。
[著者所属機関] Taizhou Hospital of Zhejiang Province Affiliated to Wenzhou Medical U, Key Laboratory of System Medicine and Precision Diagnosis and Treatment of Taizhou, Taizhou Institute of Medicine, Westlake U, Westlake Institute for Advanced Study, Westlake Omics (Hangzhou) Biotechnology Co Ltd, Calibra Lab at DIAN Diagnostics
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