[出典] "Quantifying allele-specific CRISPR editing activity with CRISPECTOR2.0" Assa G, Kalter N [..] Hendel A, Yakhini Z. Nucleic Acids Res 2024-07-30. https://doi.org/10.1093/nar/gkae651 [所属] Reichman U, Bar-Ilan U, Rahan Meristem (1998) Ltd, Technion - Israel Institute of Technology
CRISPR-Cas9ゲノム編集は、ガイドRNAを介して標的配列を認識することから、一塩基多型 (SNV)に起因する 疾患特異的なアレル変異を手がかりにした遺伝子治療を実現可能であり [*1, 2]、アレル特異的ガイドRNAの設計ツール [*3]や、アレル特異的な編集活性の定量機能を備えたガイドRNA活性予測ツールCRISPResso2 [*4]も開発されてきた。
しかし、CRISPResso2はアレルごとに個別のリファレンスが必要であり、対象が主として既知のSNVに由来するアレル変異に限定されていた。イスラエルの研究チームが今回、先行研究で開発していたツールCRISPECTOR [*5]に、解析対象とするSNVの範囲を拡げたアレル特異的な編集活性定量オプションを追加し、CRISPECTOR2.0として発表した [Figure 1引用右図参照]。
CRISPECTOR2.0はまず、コントロールサンプルを利用して、参照配列から逸脱した配列内のヌクレオチドを同定し、個別化参照配列を作成する。複数のSNVを含む部位では、エントロピーをベースとする統計的アルゴリズムを採用し、次世代シーケンシング (NGS)のリード頻度とリード数の双方を考慮してハプロ・アレルを呼び出す。最後に、NGSのリードが同定されたハプロタイプに割り当てられ、INDEL誘導活性が各アレルについて個別に決定される。
全体として、CRISPECTOR2.0は、(i)潜在的なシーケンスノイズや増幅ノイズを効果的に考慮した統計的アルゴリズム、(ii)アプリオリ情報の必要性を不要にしたサンプルごとのde novo SNV同定、(iii)正確なアレル特異的CRISPR活性測定、などの利点を備えている。こうしたCRISPECTOR2.0の性能は、ヒト初代細胞、植物、および広範なヒト細胞株データベースを含む多様な細胞タイプのデータで、実証された。また、SNVがプロトスペーサー隣接モチーフ (PAM)配列の変化を誘発し、アレル特異的な編集をもたらす例を同定した。興味深いことに、アレル編集の差が、遠位SNVを持つ領域でも観察され、さらなるエピジェネティック因子の関与が示唆された。
CRISPECTOR2.0は、予めリファレンスを用意することなく (レファランスフリーで)、アレル変異に配慮したオンターゲットおよびオフターゲット活性の測定を可能にする初めてのツールである。
[プログラム入手先]
[*] アレル特異的編集関連crisp_bio記事
- 2024-07-25 [プロトコル] CRISPR/dCas9を用いたアレル特異的エピゲノム編集
- 2023-02-18 小型で特異性が高いCRISPR-Cas12jヌクレアーゼによってアレル特異的ゲノム編集を実現
- 2019-12-10 個別化sgRNAsとアレル特異的sgRNAsの設計 (2報)
- 2021-05-29 CRISPECTOR: CRISPRゲノム編集に伴うオフターゲット活性および転座を, NGSをベースとし 正確に予測するツール.
- CRISPRメモ_2019/03/07 - 1 [第1項] ディープシーケンシングデータ解析によるCRISPRゲノム編集結果判定法"CRISPResso"を大幅に改訂.
コメント