[出典] "Programmable DNA pyrimidine base editing via engineered uracil-DNA glycosylase" Yi Z, Zhang X, Wei X, Li J [..] Wei W. Nat Commun. 2024-07-30. https://doi.org/10.1038/s41467-024-50012-w [所属] Peking U, Changping Laboratory (Beijing)
塩基編集 (BEs)の進歩は、SNPsに起因する単一遺伝子の遺伝性疾患を修復するような疾患治療への期待をますます高めている。BEsの中で、シトシン塩基編集 (CBE)とアデニン塩基編集 (ABE) に含まれるデアミナーゼは、シトシン (C) やアデニン (A) をウラシルやイノシンに変換し、その後にチミン (T) やグアニン (G)として認識され、C-to-TやA-to-Gの塩基変化を促進する。このプロセスにおける中間生成物であるウラシルまたはイノシンをDNAグリコシラーゼで切断すると、脱プリン/脱ピリミジン部位 (AP部位)が生成され、その後、損傷乗り越え (translesion) DNA合成 (TLS) を経て、AP部位とは反対側の他の塩基が組み込まれる。このプロセスを利用することで、CGBE [*1, 2] やAYBE [*3, 4] が開発された。
これらの塩基編集ツールはデアミナーゼ酵素に依存しているため、TとGを編集する能力が制限されている。最近、Tong (HuidaGene Therapeutics Co., Ltd)らはN-メチルプリンDNAグリコシラーゼタンパク質 (MPG)を操作することで、デアミナーゼを介さずにグアニン塩基編集を実現した [*5]。
T-to-C、T-to-G、T-to-A変異を可能にするBEsは、ヒトの病原性SNPsの70%の修正を可能にし、相当数の点突然変異への対処に極めて有用である。中国の研究チームは今回、ウラシル、シトシン、チミンが構造的に類似していることから、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UNG) の活性部位を工夫することで、シトシンとチミンの両方を編集できる可能性があることに注目した。
ヒトのUNGを対象に、その構造情報をベースにした合理的設計と飽和変異導入実験を経て、C/Tを直接編集可能にする改変体を作出した。続いて、より効率的なチミン塩基編集を実現するために、相同タンパク質の探索、と変異スクリーニングを駆使して、ヒト以外の生物種のUNGを探索し、Deinococcus radiodurans UNG変異体を同定した。このDrUNGタンパク質をニッカーゼCas9と融合させると、内因性部位での効率的なチミン塩基編集が可能となり、濃縮することなく最大55%の編集効率を達成し、細胞毒性も最小限に抑えられた。
このチミン塩基エディター (TBE) の標的特異性は高く、ムコ多糖症Ⅰ型Hurler症候群患者由来の細胞においてα-L- イズロニダーゼ (IDUA) 酵素活性を著しく回復させるツールとしてその性能が実証された。
TBEは、効率的で特異的かつ低毒性の塩基編集アプローチであり、関連疾患の治療に応用できる可能性がある。
[参考] シトシンとチミンの塩基編集を可能にするヒトUNGのエンジニアリング
[Fig. 1引用右図参照]
[Fig. 1引用右図参照]
UNGの活性部位ポケットは、主にウラシル (U) を除去するために進化してきた。ピリミジン間の構造的類似性にもかかわらず、シトシン、チミン、ウラシルは明確な違いを示し、特にチミンの5位にメチル基がある [右図 c 参照]。構造解析によると、アミノ酸G143-D145、Y147、N204は、ヒトUNG(hUNG)における活性部位ポケットの大きさに影響を与える役割を果たしている [右図 b 参照]。従って、これらのアミノ酸に変異を導入することで、活性部位ポケットへのCやTの進入を可能にし、プログラム可能なCやTの塩基編集を容易にする可能性がある [右図 d 参照]。
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