[出典] "Magnetothermal-activated gene editing strategy for enhanced tumor cell apoptosis" Li M, Li S, Guo YD, Hu P, Shi J. J Nanobiotechnology. 2024-07-30. https://doi.org/10.1186/s12951-024-02734-8 [所属] Shanghai Institute of Ceramics CAS, U CAS, Medical School Tongji U.

 腫瘍細胞を選択的にアポトーシスに誘導する戦略は、固形腫瘍の治療において最も有望なアプローチの一つである。しかし、高温焼灼 (high-temperature ablation)や遺伝子編集などの現在の技術は、隣接する正常組織への損傷のリスクを回避することが、難題になっている。この難題の解決に向けて中国の研究チームが今回、磁気熱を介して、HSP70とBCL2の2 (デュアル)遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9遺伝子ノックアウトシステムを活性化する戦略を試行した。

 磁気熱効果を制御する磁気ナノ粒子プラットフォームでは、超常磁性ZnCoFe2O4@ZnMnFe2O4ナノ粒子の表面を、両親媒性のC18-PEI (ポリエチレンイミン)で修飾し、プラスミドDNAとヒアルロン酸を静電的に結合する [出典Scheme 1参照]。

 この戦略により、制御可能な交番磁場を介して穏やかな磁気温熱効果 (42℃) を加えることで、腫瘍細胞のアポトーシス抵抗機構を破壊するデュアル遺伝子編集を誘発するだけでなく、温熱効果そのものによって腫瘍細胞をアポトーシスに感作し、相乗的な治療効果を達成することに成功した。

 この戦略は、正常組織に大きなダメージを与えることなく、腫瘍細胞を選択的にアポトーシスへと誘導するCRISPR-Cas9システムの活性化を正確に制御することが可能である。