[出典] "In utero delivery of targeted ionizable lipid nanoparticles facilitates in vivo gene editing of hematopoietic stem cells" Palanki R, Riley JS [..] Mitchell MJ, Peranteau WH. PNAS. 2024-07-30. https://doi.org/10.1073/pnas.2400783121 [所属] U Pennsylvania, Children's Hospital of Philadelphia;参考図 Fig. 1. Design and characterization of CD45R-targeted LNPs

 単一遺伝子 (monogenic)血液疾患は、世界的に最も一般的な遺伝性疾患の一つである。これらの疾患は小児と成人の罹患率に大きな影響を及ぼし,出生前に死亡するものもある。これに対して、生体外 (ex vivo) 造血幹細胞(HSC)遺伝子編集療法は,治療を革新する可能性を秘めているが,潜在的な限界がないわけではない。生体外遺伝子編集に対して生体内遺伝子編集は、これらの疾患に対してより安全で利用しやすい治療法となりうるが、やはり、課題を抱えている。アクセスが困難な骨髄ニッチに存在する造血幹細胞を標的とする送達ベクターがないことが障害となっている。著者らは今回、この課題を、胎児発生期にアクセスしやすい肝臓に存在するHSCを利用することで解決可能なことを示した。

 著者らは、胎児HSCへの遺伝子編集カーゴの送達に、HSC表面のCD45受容体を標的とするイオン化可能な脂質ナノ粒子(LNP)プラットフォームを開発した。
  • はじめにin vitroで、CD45に特異的メカニズムによって造血系細胞へのmRNA送達が改善されることを確認した。
  • 続いて、このプラットフォームが複数のマウスモデルの生体内でHSCを安全かつ強力で長期的な遺伝子改変を媒介することを実証した。
  • さらに、このLNPプラットフォームをin vitroで最適化し、CRISPR-Cas9 mRNAとsgRNAをカプセル化して送達した。
  • 最後に、最適化され、標的化されたLNPが、1回の子宮内注射により、胎児HSCにおいてトランスサイレチン (TTR)遺伝子座における遺伝子編集を促進することを確認した。
 本研究で開発したSystematically optimized Targeted Editing MachinerySTEM)LNPsは、胎児の発育中に生体内でHSCを標的とすることにより、出生前に単一遺伝子血液疾患を治療する新戦略を実現するツールとして有望である。