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[出典] "Engineered exosomes with a photoinducible protein delivery system enable CRISPR-Cas–based epigenome editing in Alzheimer’s disease" Han J [..] Jo D-G. Sci Transl Med 2024-08-07. https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adi4830 [所属] Sungkyunkwan U, Hanyang U

 タンパク質をベースとする薬剤は多くの疾患の治療に奏功することが期待されるている。しかしながら、治療用タンパク質を標的細胞へと細胞膜を超えて効率的に送達することが、依然として難題として立ち塞がっている。一方で、様々な種類の細胞から自然に分泌されるナノサイズの小胞であるエクソソームが、治療用生体分子のナノキャリアとして有望視されている。

 韓国の研究チームが今回、光活性化可能な蛍光タンパク質の一種であるmMaple3 [PNAS, 2014]にカーゴタンパク質とエクソソーム膜マーカーとを融合させて、カーゴタンパク質を標的細胞へと導入・放出可能とするシステムを開発し、MAPLEXmMaple3 mediated protein loading into and release from exosome)として発表した。

 MAPLEXでは、エクソソーム産生細胞においてカーゴタンパク質が、エクソソーム膜マーカーを介してエクソソーム内に取り込まれ、その後、標的であるエクソソーム受容細胞において、カーゴタンパク質が、青色光照射によるmMaple3の切断を介して、エクソソームから細胞内へと放出される。

 MAPLEXによる機能性タンパク質送達を以下のように確認した:
  1. 線維芽細胞に8量体結合転写因子4(OCT4)とSRY-box転写因子2(SOX2)を導入し、転写制御を誘導可能なことを確認した。
  2. Creリコンビナーゼを導入し、Creレポーターマウス生体内での遺伝子組み換えが可能なことを確認した。
  3. アルツハイマー病モデルマウスである5xFADマウスと3xTg-ADマウスの脳において、標的エピゲノム編集を達成した。β-アミロイド前駆体タンパク質切断酵素(Bace1)を標的とするsgRNAを組み込んだdCas9 RNP複合体をDNAメチル化酵素3A(DNMT3A)の触媒ドメインと結合させたエピゲノムエディターをMAPLEXで送達し、Bace1プロモーター内の標的CpG部位のメチル化に成功した。このアプローチにより、5xFADマウスと3xTg-ADマウスにおいて、Bace1の発現が有意に減少し、認識記憶障害が改善し、アミロイド病態が軽減した。
 これらの結果は、MAPLEXが効率的な細胞内タンパク質送達システムであり、複数の疾患に対して多様な治療タンパク質を送達できることを示唆している。

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