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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] “Estimated number of lives directly saved by COVID-19 vaccination programmes in the WHO European Region from December, 2020, to March, 2023: a retrospective surveillance study” Meslé MMI et al; WHO European Respiratory Surveillance Network. Lancet Respir Med. 2024-08-07. https://doi.org/10.1016/S2213-2600(24)00179-6

 2023年3月までに、WHOヨーロッパ地域の54の国・領域・地域(countries, areas & territories: CAT)から、200万人以上のCOVID-19関連死がWHOヨーロッパ地域事務局に報告された。このデータに対して、著者らは、ワクチン接種によって直接救われた人命の数を推定した。

方法
  • この後ろ向き研究(レトロスペクティブ・サーベイランス/retrospective study) では、2023年6月11日にThe European Surveillance SystemからダウンロードしたCOVID-19の死亡率および感染率、COVID-19のワクチン接種率、系統別のSARS-CoV-2ウイルスの特徴に関する週次データ、ならびに文献から得たワクチン有効性データを用いて、地域別および全国別に、年齢層別、ワクチン接種量別、およびVOC(variant-of-concern:懸念される変異体)の流行期間別に、直接救命された人命数を推定した。
  • 6つの年齢群(25~49歳、50~59歳、60歳以上、60~69歳、70~79歳、80歳以上)のデータを対象とした。
  • 解析に含めたのは、CATが4つの高齢群のうち少なくとも1つについてCOVID-19ワクチン接種と死亡の両方のデータを報告している必要があった。
  • COVID-19ワクチン接種と死亡率の両方について、全調査期間中、調査週の90%以上で年齢群別の週間データを報告したCATのみを対象とした。
  • その上で、死亡者の予測死亡数と報告数の減少率を算出した。
結果
  • 2020年12月から2023年3月までの間に、解析の対象となった54のCATのうち34のCATにおいて、25歳以上の全年齢層でCOVID-19ワクチンは全体で死亡を59%減少させ(17~82%)、156万人あまりの命を救った(150万~170万人の範囲) 
  • 年齢層別で見ると、25-49歳 47%, 50-59歳 52%, 60-69歳 55%, 70-79歳 59%, 80歳以上 64%の死亡率減少
  • 変異株別で見ると、初回ブースターで51%、その後のオミクロン株優勢期間中で60%、の死亡率減少
  • デルタ株流行初期の60歳以上の死亡率抑制をワクチン接種率別で見ると、90%以上の接種率達成CATでは60%以上抑制されていた一方で、接種率50%未満のCATでは30%以下の抑制にとどまった。
参考:日本のワクチン接種率(厚生労働省Webサイトから)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/syukeihou_00002.html
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