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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] 
 近年、de la Fuente-Nunezの研究チームは、ネアンデルタール人やケナガマンモスのような絶滅種の遺伝情報や、研究チームがAIを利用して分析したバクテリア集団に由来する遺伝物質まで、あらゆる場所で抗生物質の候補を発見して話題になっているが、今回、ヒト腸マイクロバイオームから一連の抗菌性ペプチドを発見した。

 ヒトの腸には、およそ100兆個の微生物が存在し、限られた資源を常に奪い合っており、その競争の中で互いに多様な生体分子を生成していると考えられる。研究チームは今回、1,773件のヒト腸マイクロバイオームのメタゲノムからこれまでに報告された444,054の小型のタンパク質ファミリーを計算機でスクリーニングし、小型のオープンリーディングフレームにコードされている抗菌性ペプチド候補323種類を発見した。

 323種類のうち78種類のペプチドを合成し、in vitroで抗菌活性をスクリーニングしたところ、70.5%が抗菌活性を示した。研究チームはこれらのペプチドが、これまでに報告されている抗菌ペプチドとは異なるクラスを形成したことから、smORF-encoded peptides (SEPs)と命名した。

 SEPsは、細菌の膜を標的とし、互いに相乗効果を発揮し、腸内常在菌を調節することによって病原性のある無しにかかわらず他の細菌を死滅させたことから、病原体への対抗に加え、マイクロバイオーム・コミュニティの再構築にも関与する可能性が示唆された。

 創薬の出発点となるリード化合物となったペプチドは、マウス皮膚膿瘍および大腿部深部感染モデルの両方で抗感染性を示した。特に、Prevotella copri 由来のprevotellin-2は、多剤耐性菌に対して一般的に使用されている抗生物質ポリミキシンBに匹敵する活性を示した。

 今回の報告は、多剤耐性菌を標的とする臨床応用が可能な数百種類の抗菌薬がヒトのマイクロバイオームに存在することを裏付けるものである。

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